PF-085:和歌山県妙法鉱山跡採掘滓に生育する重金属耐性微生物の系統解析
1徳島大・総科・生化, 2徳島大院・総科・生化, 3徳島大院・SAS
西日本の中央構造線沿いには黄銅鉱、硫化鉄鉱の鉱山跡が存在し、それらの環境に適応した微生物が存在すると考えられる。過去の研究において我々は、四国の吉野川流域に存在した黄銅鉱、硫化鉄鉱の鉱山跡採掘滓に存在する重金属耐性微生物について調査・報告した(佐藤ら、阿波学会紀要, 58, 187-196,2012)。一方、和歌山地域の中央構造線南側(西南日本外帯)の紀伊山地には黄銅鉱などを産出した鉱山跡が存在し、谷沿いには採掘滓の堆積した地層が存在する。2011年9月の台風12号による土石流災害により、特に那智勝浦町妙法鉱山跡周辺で土砂の崩落と地層・河川水の赤色化が見られた。そこで本研究では、この地層・河川水の赤色化や重金属の漏出に微生物が関与する可能性を検討するために、和歌山県妙法鉱山跡採掘滓から硫酸鉄、硫酸銅耐性微生物の探索をそれぞれ行った。
まず、妙法鉱山跡採掘滓15箇所より採取した各土壌試料を滅菌水に懸濁し、上清を0.5-2mM 硫酸銅または硫酸鉄を含むLB寒天培地に塗布し, 30℃, 2-7日間培養し、生育可能な微生物(硫酸銅5種、硫酸鉄7種)を単離した。その後、各微生物よりゲノムDNAを調製し、16SrRNA遺伝子をPCRで増幅、pGEM-Tベクターにクローニングした。16SrRNA遺伝子の系統解析の結果、硫酸銅に耐性を示す微生物としてStreptomyces属細菌が、硫酸鉄に耐性を示す微生物として、Paenibacillus属、Geobacillus属、Staphylococcus属細菌などが検出された。特にStreptomyces属細菌は硫酸銅培地を茶変させたことから、過去に我々が高知県白滝鉱山跡より単離した硫酸銅耐性を持つStreptomyces属細菌の特性と類似しており、銅耐性には鉄酸化酵素活性(Ferroxidase)が関与している可能性も考えられる。
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