PF-084:陸棲藍藻 Nostoc sp. HK-01 の乾熱耐性
1筑波大学, 2三重大学
【背景】陸棲藍藻 Nostoc sp. HK-01は、乾燥状態で高低温、紫外線、重粒子線、γ線および真空に対する高い環境耐性を備える。将来の地球圏外環境等の過酷環境における大気酸化、土壌作出および食資源への利用が期待できる。本株で認められた耐性のうち、水の沸点に値する100℃の乾熱耐性は、得られる藻体で著しい差異が認められたが、この原因は明らかにされていない。本研究は本株の乾熱耐性に関する基礎研究として、以下2点に注目して調べた。①本株の生活環を明らかにし、本株の各細胞形態における乾熱耐性を調べた。②これまでに藍藻の環境耐性への関与が報告されている、陸棲藍藻がその生育環境中に放出する細胞外多糖(Extracellular polysaccharides ; EPS)の、乾熱耐性への関与を検証した。
【方法】Nostoc sp. HK-01を本研究の全ての材料に用いた。培養後の湿潤藻体を自然乾燥させ、自然乾燥藻体を用意した。自然乾燥藻体を乾熱し、熱曝露藻体を用意した。各藻体中の生存細胞を染色し、生存率を算出した。高い熱耐性を具備する細胞形態の決定は、各細胞形態を顕微鏡観察により調べた後、藻体中の各細胞形態の含有率と生存率の相関を調べることで行った。EPSの熱耐性への関与は、本株の藻体からEPSを除去し、乾熱した後の生存率をEPS未除去藻体と比較することで調べた。EPSの除去処理法はTamaruら(2005)の方法に習った。EPSの除去は多糖の染色により確認した。
【結果および考察】Nostoc sp. HK-01の生活環として、栄養細胞の連鎖体、異型細胞、休眠細胞への分化および、休眠細胞の発芽による栄養細胞への一連の分化を確認した。自然乾燥藻体および熱曝露藻体において、藻体中の休眠細胞の含有率と生存率の間に明らかな相関が認められた。本株の乾熱耐性は休眠細胞にのみ備わることをはじめて明らかにした(Biol. Sci. Space, 29, 12-18, 2015)。休眠細胞の乾熱曝露後の生存率はEPSを除去しても有意な差は認められなかった。本株のEPSの乾熱耐性への関与は低いことから、休眠細胞内に乾熱耐性に関わる何らかの機能性物質が蓄積している可能性が示された。今後、休眠細胞への分化を誘導することで高耐性の藻体の作出が期待できる。
keywords:akinete,cyanobacteria,heat tolerance,*Nostoc* sp. HK-01