PF-080:立山地獄谷における火山性ガスが積雪中の細菌群集構造に及ぼす影響
1富山大・院・理工
【目 的】2011年の東日本大震災以降,富山県の立山地獄谷では火山性ガスの噴出が活発となり,周辺のハイマツが立ち枯れる被害が深刻化している。また,積雪期において火山性ガスの影響と思われる積雪表面の着色が観察されている。そこで本研究では,火山性ガスが積雪中の微生物に及ぼす影響を把握することを目指して,積雪試料中の細菌群集の特徴を解析した。
【方 法】積雪試料は,2013年7月11日に,立山地獄谷の噴出孔から東方向へ約50〜500m離れた9地点と,南方向へ約700m離れた1地点,計10地点で採取した。融解させた各積雪試料400mlからDNAを抽出し,細菌の16S rDNAのV3領域を標的として,PCR-DGGE(変性剤濃度勾配ゲル電気泳動)法で細菌群集構造解析を行った。また,リアルタイムPCR法による全細菌数の測定と,次世代シークエンサー(NGS)MiSeqによる細菌群集構造解析を行った。
【結果と考察】PCR-DGGE法とNGSによる細菌群集構造解析を行ったところ,どちらの解析でもProteobacteria門に属する細菌が最も多く検出された。その中でも,α-Proteobacteria網に属する好酸性細菌Acidiphilium属が,立山地獄谷の噴出孔から近い地点で高頻度に検出される傾向が見られ,火山性ガスが積雪中の細菌群集構造に及ぼす影響が示唆された。その他,NGS解析からは,Bacteroidetes門,Acidobacteria門,Actinobacteria門に属する細菌などが検出された。また,雪氷藻類の葉緑体DNAも多くの試料から検出された。リアルタイムPCR法による全細菌の定量では,104〜106 cells/mlと推定された。
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