PE-068:n-アルカン分解メタン生成培養系の群集構造解析
1岐阜大学大学院応用生物科学研究科, 2琉球大学熱帯生物圏研究センター, 3岐阜大学大学院応用生物科学部
現在、最も利用比率の高いエネルギー資源である石油(原油)は、中国やインドなどの振興国における需要の増加により枯渇が懸念されている。一方で、地下には60%近くの原油が残存しており、採掘コストの問題から回収が困難となっている。この問題に対し、微生物によって原油を分解し、よりエネルギー効率の高いメタンに変換して回収する方法が提唱されている。Zenglerら(Nature,1999)により、原油の主成分であるn-アルカンをメタンまで分解する微生物群集が発見され、アルカン分解菌とメタン生成アーキアが存在し、これらの微生物の共生によってn-アルカンからメタンが生成されると考えられている。しかし、この環境におけるn-アルカン分解は極めて遅いため、n-アルカンからメタンに至るまでの分解経路やそれを担う微生物(特にアルカン分解菌)に関する知見はまだ不十分である。本研究ではn-アルカンを唯一の基質としたメタン生成培養系を構築し、アルカン分解メタン生成反応の鍵となる微生物の特定を目的とした。新潟県長岡市妙法寺草生水献上場から土壌と産生水を採取し、無機塩培地に嫌気的に植菌した。その培地にn-アルカン混合物を加えた系、非添加系、アルカンを添加した滅菌コントロール系を用意し培養を行った。培養開始148日目でアルカン添加系において他系と比較して有意なメタン生成が確認でき、培養開始441日目で、アルカン分解により生じた還元力の約80%がメタン生成に利用されたことが示された。アルカン添加系と非添加系の培養液と植菌源試料からDNAを抽出し、454パイロシーケンサーによるメタ16S解析を行った。その結果、未培養Peptococcaceae科細菌が優占種となり、これはカナダのオイルサンドテーリングポンドの試料を植種源としたメタン生成系においても優占種であった(Siddiqueら,EST,2012)。更にCARD-FISHにより、未培養Peptococcaceae科細菌がバクテリアのおよそ60%を占めたことを明らかにした。また、アルカン代謝経路を推定するために嫌気的アルカン代謝酵素(アルキルコハク酸合成酵素,Ass)遺伝子の特異的プライマー(Tanら,FEMS Ecol,2015)を用いたPCRを行った。その結果、本アルカン分解メタン生成培養系からその増幅は確認されず,Assの関与は示されなかった。
keywords:アルカン分解,メタン生成