PD-056:活性汚泥中に存在するメチロトロフの比較メタゲノム解析
東京薬大・生命
[背景・目的]メチロトロフとは、C1化合物を唯一の炭素源・エネルギー源として生育する微生物で、環境中の炭素循環において重要な役割を果たすとともに、工業製品の製造過程等で広く利用されるメタノールを含む工業廃水の処理にも欠かせない。今までに多くのメチロトロフが活性汚泥などの廃水処理生態系から単離され、その性質が調べられてきた。しかし集積培養を経て単離されたメチロトロフが廃水処理生態系で重要な役割を果たしているかには疑問が残る。そこで本研究では、活性汚泥中に優占的に存在するメチロトロフの特徴を解明するため、メタノール処理活性汚泥とメタノール集積培養物の比較メタゲノム解析を行った。
[方法]ラボスケールの活性汚泥槽でメタノールを主な基質とした人工下水を処理させ、メタノール馴養活性汚泥(MAS)を得た。また、同じ種汚泥を用いてメタノールを基質にした連続式培養(MCC)およびバッチ式培養(MBC)により、メチロトロフを集積した。これらのサンプルからDNAを抽出し、パイロシーケンスを用いた16S rRNA遺伝子の分子系統解析およびIllumina社のHiseq2000を用いたショットガンメタゲノム解析を行った。
[結果・考察]分子系統解析においては、MCCとMBCではMethylophilaceaeが大多数を占めるが、MASではこれらよりHyphomicrobiumが多かった。この属にはメチロトロフが含まれることが知られており、活性汚泥中でのメタノールの処理にはHyphomicrobiumが関与していることが示唆された。メタゲノムのコンティグを選抜してbin genomeを作製したところ、分子系統解析により存在が示唆されたMethylophilaceaeやHyphomicrobiumに相当する完成度の高いbin genomeが再構成された。これらはMxa型やXox型のメタノール脱水素酵素やC1同化経路を持つことから、メチロトロフであることが確認された。このHyphomicrobiumがどのようにして活性汚泥中で優占化したかに興味が持たれたので、構築したメチロトロフのbin genome間の比較や、近縁種との比較ゲノム解析を行い、そのゲノム的な特徴を明らかにしていきたい。
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