PD-051:嫌気性アンモニウム酸化細菌由来ヒドラジン合成酵素の精製
1長岡工業高等専門学校, 2長岡工業高等専門学校, 3北海道大学
嫌気性アンモニウム酸化(anammox)反応とは嫌気的にアンモニウムを窒素ガスまで酸化する反応であり、亜硝酸が電子受容体として用いられる。Anammox反応においてヒドラジンは中間代謝物であり、ヒドラジン合成酵素がアンモニウムおよび一酸化窒素からヒドラジンを合成する。ヒドラジン(N2H4)は分子内に窒素原子の二重結合をもつ化合物であり、窒素の二重結合を有する化合物を合成する酵素は一酸化窒素還元酵素(Nor)とヒドラジン合成酵素のみが知られている。ヒドラジンはロケットエンジンの液体燃料や還元剤として利用される物質であり、こうした有用物質を合成する酵素はバイオテクノロジーの観点から興味深い。本研究ではanammox細菌”Candidatus Brocadia sinica” の細胞破砕液からヒドラジン合成酵素を精製し、酵素学的な機能を明らかにすることを目指した。連続通水式カラムリアクターで培養した”Ca. Brocadia sinica”の菌体 (18 g-wet)をビーズビーディング法で破砕、遠心分離し、粗抽出液を得た。粗抽出液に含まれるヒドラジン合成酵素を精製するため、粗抽出液を陰イオン交換クロマトグラフィー(Q sepharose XL担体)へ供し、NaCl濃度を高めることで吸着タンパク質を溶出させた。0.1 M NaClにおいて溶出したタンパク質を回収、限外濾過濃縮(30 kDa MWCO)した後、ゲル濾過クロマトグラフィー(Superdex 200担体)へ供した。ゲル濾過クロマトグラフカラムから溶出したタンパク質を回収し、限外濾過濃縮した画分を最終精製物とした。ヒドラジン合成酵素の純度を確かめる目的でSDS-PAGE解析を行った。最終精製物からは3本のタンパク質バンドが検出され(推定分子量:90 kDa、41 kDa、37 kDa)、これらの分子量はヒドラジン合成酵素α、β、γサブユニットの分子量と類似した。PAGEゲル上で検出されたバンドがヒドラジン合成酵素であることを証明するため、ゲルバンドを切りだし、トリプシン消化後、nano-LC/MS/MS解析を行った。その結果、ゲルバンドがヒドラジン合成酵素α、β、γサブユニットに相当することを確認することができた。現在、ヒドラジン合成酵素の比活性、基質特異性について調査を行っている。
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