OA-35:微細藻類由来の溶存態有機物に対する海洋細菌群集の動態解析
北海道大学大学院地球環境科学研究院
[研究の目的] 本研究では、外洋性微細藻類株から抽出した溶存態有機物 (DOM) のアミノ酸組成比を解析すると同時に、抽出DOMの添加に対する海洋細菌群集の動態解析を行うことで、海洋生態系(特に外洋域)における海洋細菌と微細藻類間の相互作用を解明することを目的とした。[材料と方法] 外洋性微細藻類 (Synechococcus sp. clade V、Pelagomonas calceolate、Thalassiosira oceanica、Chrysochromulina camella、Pycnococcus provasolii)を培養した後、細胞破砕し、微細藻類抽出DOMを得た。これらの抽出DOMの溶存態アミノ酸組成比 (ペプチド態および遊離態) をニンヒドリン/HPLC法およびNBD-F/UHPLC法により解析した。また、太平洋赤道域および熱帯域において、これらの抽出DOMを用いたDOM添加培養実験を行った。培養前後の細菌群集を、セルソーターを用いて細胞内核酸濃度が高い (HNA) 細菌群および低い細菌群 (LNA) に選別し、それぞれの画分に対して、16S rRNA遺伝子を標的としたT-RFLP解析およびIon Torrentを用いたシーケンス解析を行うことで、抽出DOM添加に対する細菌群集の変動を解析した。[結果と考察] 各微細藻類抽出DOMのアミノ酸組成比はペプチド態では大きな相違は見られず、遊離態で見られた。細菌群集構造解析の結果、抽出DOMの添加に対する細菌群集構造の変化は、観測点間およびHNA-LNA細菌群間で大きく異なることが明らかとなった。抽出DOM添加に対する細菌群集構造の変化および変化に寄与した細菌系統群を、Similarity percentage (SIMPER) analysisを用いて解析した結果、HNA細菌群集構造の変化はPelagomonas由来のDOM添加区で最も大きく (変化率56%)、これらの変化にはAlcaligenes属 (Betaproteobacteria亜綱)が寄与していたことが明らかとなった。また、LNA細菌群集構造の変化はChrysochromulina由来のDOM添加区で最も変化が大きく (53%)、Actinobacteriaに属する系統群が最も変化に寄与していたことが明らかとなった。
keywords:海洋微細藻類,海洋細菌群集,溶存態有機物,アミノ酸組成比