OA-33:下水処理UASB汚泥から高頻度に検出される未培養微生物の基質利用推定と分離培養の試み
1新潟薬大・応生, 2長岡技大・環, 3東北大・NICHe
【背景】Caldiserica門は2009年に提唱された比較的新規のバクテリア門で、現在報告されている分離株はCaldisericum exile AZM16c01Tのみの難培養グループである。既往研究よりCaldiserica門に属する未培養phylotypeが下水処理UASB汚泥から高頻度に検出され、重要な機能を担う事が示唆された。本研究は、未培養phylotype (OP5) の機能・生態の解明を最終目標とし、UASB汚泥の短時間回分培養とReal-time RT-PCRを組み合わせた基質利用推定技術を適用し、OP5の利用可能な基質推定を試みた。またFluorescence in situ hybridization (FISH) 法を行い、グラニュール汚泥内空間分布を把握し、最後に推定基質を利用したOP5の分離培養を試みた。
【方法】UASB汚泥の短時間回分培養は、Propionate、Acetate、Peptone、Starch、Yeast Extractを炭素源として、30_Cで最大18時間培養した。継時的に採取した培養液から全RNAを抽出し、Real-time RT-PCRによりOP5の16S rRNA (cDNA) を定量した。OP5の分離培養は、各種炭素源を400 mg-CODCr/Lで添加した無機塩培地にUASB汚泥を接種し、段階希釈後30_Cで静置培養を行なった。培養期間中はFISHおよびPCRを行いOP5の増殖を確認しながら適宜継代を行なった。
【結果】短時間回分培養とReal-time RT-PCRによる基質利用推定の結果、Acetate、Propionate添加系においてOP5-16S rRNA発現量が培養時間の経過に伴い増加した。OP5とメタン生成アーキアMethanomicrobialesを標的とした二重染色FISHの結果、両者と思われる細胞から発する2つの蛍光シグナルの重なりが確認された。AcetateまたはPropionateを主要な炭素源とする培地を用いた限界希釈法によりOP5の分離を試みた結果、Acetate培養系において、継代を繰り返すごとに全菌に対するOP5菌体の存在割合が上昇した。現時点でOP5菌体が約17%集積した培養系を得ており、OP5の分離に向けた集積と継代培養を行なっている。
keywords:Caldiserica,Uncultured microorganism,Anaerobic sludge,Sewage treatment,FISH