PL-203:抗菌材表面に形成されたバイオフィルム内の細菌群集構造解析
1立命館大学大学院 生命科学研究科, 2立命館大学 生命科学部
抗菌材は細菌の増殖速度を低下させ、増殖の停止を早めることが解っている。ところが抗菌材を自然環境や生活環境で使用した場合、その表面にはバイオフィルムが形成される。これまで本研究室では、シンクに長期間(約5年間)設置した抗菌材の表面に形成されたバイオフィルムを解析してきた。その結果、バイオフィルム内には、非抗菌材表面のバイオフィルムと同程度の密度で細菌が存在し、非常によく似た群集構造になっていることが解ってきた。抗菌材を長期間使用すると抗菌効果がなくなる可能性が示唆された。そこで本研究では、抗菌材表面に短期間(8週間)バイオフィルムを形成させ、経時的に採取してその内部の細菌群集構造を調べることで、抗菌効果の有無、抗菌材表面に形成されるバイオフィルムの特徴を明らかにすることを目的とした。
2014年9月に抗菌材と非抗菌材(どちらもポリスチレン樹脂)を屋内(シンク)と屋外(自然池)にそれぞれ設置した(暗条件)。設置後、経時的(1、4、8週目)に各表面に形成されたバイオフィルムを採取し、バイオフィルム内の細菌群集構造をPCR-DGGE法によって解析した。
屋内で形成させたバイオフィルムのDGGEバンドパターンは経時的に変化しており、形成期間が長くなるほど周りの水との違いが大きくなっていた。バイオフィルムにのみ見られる特徴的なバンドが存在し、形成期間が経つにつれてそのバンドの数が増えていた。抗菌材と非抗菌材とではバンドパターンに大きな違いは見られなかったが、抗菌材のみに見られるバンドや非抗菌材のみに見られるバンドが存在した。抗菌材の影響によって、バイオフィルム内に存在する細菌の種類が一部変化することが考えられた。
屋外で形成させたバイオフィルムでは、屋内のバイオフィルムとは異なるバンドパターンになっており、どの形成期間でもバンドパターンが似ていた。周りの水のバンドパターンと比較すると、バンドパターンは異なっていたが、同じ位置のバンドがいくつか見られた。また、抗菌材と非抗菌材のどちらかにのみ見られるバンドが存在した。
抗菌材を設置する環境によってその表面に形成されるバイオフィルム内の細菌群集構造は異なるが、内部の細菌の一部が抗菌材の影響を受けることが推測された。
keywords:Antimicrobial surface,Bacterial community structure ,PCR-DGGE