PJ-171:赤潮原因藻ヘテロシグマに感染する大型dsDNAウイルスHeterosigma akashiwo virusの感染過程についての研究
1岡山大学資源植物科学研究所
近年、ゲノムサイズが数百kbpという大型二本鎖DNAウイルス(G-DNAV)が様々な宿主生物から発見され、その生活環に興味が持たれている。Heterosigma akashiwo virus (HaV)は、そのようなウイルスの1種で、赤潮原因藻ヘテロシグマ(学名 Heterosigma akashiwo)に感染し、殺藻するウイルスとして単離された。我々は、HaVの全長配列を解読し、さらに、その感染過程について精査した。HaVの一系統であるHaV53は、全長273-kbpのゲノムを持つ。HaVは、同じくPhycodnavirus (Phyco-DNA-virus)に属するChlorovirusに高い相同性を持つ因子を持つが、ゲノム領域によっては、Chlorovirusとの相同性が低い領域も見られ、特徴的な配列を有すると言える。
現在のところ、G-DNAVの感染過程についての情報—特に、数多くのウイルス遺伝子が感染過程でどのように機能しているのか—はきわめて限られている。たとえば、これまでに研究されたG-DNAVのいくつかでは、感染過程に特に必要とされない因子が見いだされている。古典的なウイルスとは、『数少ない因子で宿主細胞機能を調節し、ウイルス遺伝子の増幅・発現を実現する半生命体』として理解されてきたが、G-DNAVは、その理解に反するものであると言える。
私たちは、HaVに対して異なる感染症状を示す宿主を単離し、それらにおける感染過程を詳細に検討することで、HaVが有する数多くのウイルス遺伝子が感染過程に果たす役割に関する情報を得ることを目的に研究を進めている。これまでに、私たちは、HaVによって殺滅される宿主株と、HaV感染後ウイルスを増幅するものの死滅しない宿主株、目立ったHaV増幅を起こさない宿主株等を単離した。それらの宿主でのHaV感染過程におけるHaV遺伝子発現解析をおこなうことで、それぞれの因子がHaV感染過程において果たす役割を検証した結果を発表する。
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