PI-151:Anammox活性に対する20物質(重金属,キレート剤,アミン類,有機溶媒)の影響I. 〜小スケール回分試験による短期的阻害の定量と比較〜
1中央大・院理工, 2日立製作所
【はじめに】 嫌気性アンモニア酸化(anammox)活性に対する化学物質による阻害は,おもに,模擬リアクターによる排水処理効率への影響として検討されてきた。この方法では,多数の物質について系統的なデータを取得し,比較することが困難である。これを解消するため,本研究では小スケール回分試験系を確立し,20種の物質(7重金属,4有機溶媒,5アミン類,および4キレート剤)がanammoxに及ぼす影響を同一条件で定量的に比較検討した。
【方法】 重金属は水溶液のpHを下げ,逆にアミン類は上昇させる。pH 7.4での緩衝能を維持できる25 mM HEPESを含む基礎培地を用い,この問題を回避する回分試験系を確立した。下水汚泥を種汚泥とし,不織布を充填した上向流式リアクターで集積したanammox(Ca. Brocadia sp.)のバイオマスを無酸素化した基礎培地に懸濁し(155 μg- protein / mL),その5 mLを12.5 mL容バイアルに分注,ヘッドスペースをHeで置換した。懸濁液に,15NH4ClとNaNO2を各1.5 mM(終濃度),対象物質1種を様々な濃度で添加し,GC / MSでanammox由来の29N2を継時的に求め(30 ℃),活性の初速度とした。
【結果と考察】 検討した20種中,5種(Co2+, Mo6+, Mn2+, Fe3+, DAAc)によるanammoxの阻害は認められず,残りの15種は活性を阻害した。うち4種(THF, DEA, EDTA, NTA)については,濃度が閾値を超えると急激に阻害したが, 11種(Ni2+, Cu2+, Zn2+, 1,4-dioxane, DMSO, DMF, MEA, TEA, HMA, EDDHA, クエン酸)については,濃度の上昇につれて直線的あるいは指数的に活性が減少した。後者の濃度とanammox相対活性との関係は動力学モデルに当てはめることができた(針ヶ谷ら,本大会)。実験から推定したIC50値は:2重金属,0.22-0.28 mM;4キレート剤,0.07-2.6 mM;4アミン類,9 -15 mM;4有機溶媒,13.5 – 90 mMであった。広く使われるキレート剤であるEDTAが最も強い阻害を示した。ただし,金属をキレートした形態での阻害作用は,金属のみでの阻害と同程度であった。
keywords:anammox,half-inhibition concentration,batch test,15N tracer technique