PD-059:最確数法・制限酵素断片長多型解析法による活性汚泥中の微生物群集解析
1福岡工大院・工, 2福岡工大・工
【背景・目的】私達は、最確数法と制限酵素断片長多型解析法を組み合わせた方法が微生物群集解析に有効であることを見出し、マイクロチップ電気泳動装置(MCE-202 MultiNA ; 島津製作所)で得られた制限酵素断片長データから効率的に微生物群集の各々の微生物の同定・定量を行うための条件検討を行ってきた。この方法の水系試料中の微生物群集解析への利用例として、活性汚泥試料から直接DNAを抽出して解析する方法で報告してきた。その際に生じたDNA抽出時の回収効率の問題や、制限酵素断片の選抜が困難になる問題を解消するため、今回はAmpdirect Plus (SHIMADZU)を使用してDNAの抽出操作を行わずに活性汚泥試料を直接PCRに供する方法で解析を行った。
【方法】今回は、畜産排水処理施設から採取した活性汚泥試料から希釈系列を調製しAmpdirect Plusを使用して各希釈段階のサンプルを直接PCRに供して16SrDNA特定領域の増幅を行った。PCR産物を制限酵素断片長多型解析法により解析して微生物群集のそれぞれの細菌の属名を推定した。そして、推定された細菌群を各希釈段階毎に集計して最確数法により計数し、試料中の微生物群集の定量を行った。
【結果・考察】試料を培養して解析した場合に全菌数は2.4×109MPN/mlと推定されたが、試料からDNAの抽出を行い解析した方法では全菌数は2.0×106MPN/mlと推定され、DNA回収効率が課題となることがこれまでに判明した。さらに、制限酵素断片の選抜が困難であったため細菌の同定はできなかった。今回、Ampdirect Plusを使用して試料の希釈系列を直接PCRに供して解析した結果、全菌数は>1.1×109MPN/mlと推定され、Pseudomonas fluorescenceがそのほとんどを占めており、わずかにuncultured bacterium(AY212653)が含まれていた。今回の解析結果ではグラム陰性菌がほとんどを占める結果となり、PCRに使用したプライマーセットでグラム陰性菌の遺伝子が優先的に増幅されている可能性が考えられるため、グラム陽性菌をターゲットとしたプライマーセットでのPCRを行い、結果を比較する予定である。
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