PD-055:嫌気消化汚泥を利用した溶存有価金属の回収
1山形大・農, 2山形自販RC
[はじめに]毎年、大量の電化製品や自動車が廃棄されているが、そのコンピュータのプリント基盤や排気ガス浄化用触媒などの部位には、Pt、PdあるいはAuといった有価金属が使われている。これらの有価金属は、ほとんど回収されることなく廃棄されているのが現状であるが、近年、産出国の輸出制限があったことを背景に、廃棄物から回収しようとする試みが活発化している。
廃棄物からの有価金属の回収は、物理的および化学的な手法により行うことができるが、その際に、未回収の金属を含む廃水が生じる。近年、微生物を利用して廃水中に溶存する金属を回収する方法が注目されている。
廃水処理プロセスでは汚泥が大量に発生し、廃棄物として処理されているが、この汚泥には微生物が多く含まれている。本研究では、汚泥を溶存有価金属の回収に有効活用できないか検討した。
[材料と方法]AuCl3、CuCl2、PdCl2、PtCl2およびRhCl2・3H2Oを王水で溶解して混合したものを模擬金属含有廃水とし、これを汚泥に添加して30℃で保温することで、有価金属を液相より回収できるか調べた。汚泥は、都市下水汚泥嫌気消化槽から採取したものを用いた。回収された各金属の量は、保温試料上清中の各金属濃度の変化を誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP)で測定して算出した。
[結果]模擬金属含有廃水を各金属濃度がそれぞれ0.1 mMとなるように汚泥に添加して2時間保温したところ、CuおよびPdの90%以上が回収された。他の金属についても、60%以上を回収することができた。さらに模擬金属含有廃水を添加して2時間保温することを繰り返したところ、2回目の保温後にはCuとPd以外の金属回収率も75%以上に上昇したが、4回目以降の保温ではAu以外の金属で回収率が低下した。特にCuとRhの回収率は著しく低下し、6回目の保温後の回収率はそれぞれ27.4%と21.6%となった。6回目の保温の後に、さらに1ヶ月間保温を延長したところ、各金属の回収率は、CuとRhについては低いままだったが、Au、PdおよびPtについてはほぼ100%となった。回収率へのpHの影響を調べたところ、pHが低いほど金属回収率が低下する傾向があった。以上の結果から、汚泥を利用して溶存有価金属を効率良く回収できることが分かった。
keywords:有価金属,レアメタル,嫌気消化汚泥,金属回収,資源循環型社会