PB-039:陸域環境における亜硝酸還元酵素遺伝子の分布と組成
1東京大学, 2新潟農総研, 3茨城大学, 4東京農工大学, 5京都大学
【背景と目的】脱窒はNO3−やNO2−がN2OやN2へと逐次的に還元される微生物代謝であり、陸域の窒素循環において固定された窒素が大気中に放出されるプロセスである。脱窒微生物の検出には、NO2−をNOへと還元する酵素をコードする亜硝酸還元遺伝子nirKおよびnirSが多くの研究において利用されている。nirは細菌、アーキアおよびカビを含む多様な微生物が有している。従来のPCR法では主にプロテオバクテリア門の一部の細菌群のnirしか検出されてこなかったが、我々は新規のプライマーセットを作成し、多様な微生物が有するnirの検出を可能にした。そこで本研究では、この新規プライマーセットを用いて陸域環境におけるnirKまたはnirSの分布と組成を明らかにすることを目的とした。
【方法】湛水期と落水期の水田土壌、施肥および無施肥の畑地土壌、天然林と人工林の森林土壌および湖堆積物を試料とした。それぞれの試料から微生物DNAを抽出し、新規プライマーセットを用いてnirKとnirSのPCR増幅を試みた。続いて、nirKとnirSのクローンライブラリー解析ならびに大規模シーケンス解析を行った。
【結果】全ての試料において細菌が有するnirKとnirSが検出された。一方で、カビのnirKは畑地土壌と森林土壌でのみ検出された。細菌のnirKとnirSについては従来のプライマーセットを用いたPCRでは検出されないnirKとnirSもまた検出された。またクローンライブラリー解析の結果、特に畑地土壌、多くの森林土壌、湖堆積物においては硝化微生物が有するnirKやActinobactria門、Bacteroidetes門、Chloroflexi門、Spirochaetes門細菌が有するnirKやnirSに近縁な配列が得られた。これらの結果は陸域環境において従来検出されてきた以上に多様な微生物群がnirKやnirSを有しており、それぞれの環境によりその組成は異なる可能性を示唆している。これらの結果に加え、発表では大規模シーケンス解析の結果も併せて報告する。
keywords:脱窒,亜硝酸還元酵素,nir