PB-038:水田土壌における硝酸のアンモニウムへの異化的還元
1東京大学, 2新潟農総研, 3茨城大学
【背景と目的】
水田土壌中のアンモニウムと硝酸イオンは稲作において重要な養分である。硝酸イオンは微生物により還元されるが、その主な反応は窒素ガスへと還元される脱窒であると考えられてきた。しかし、近年アンモニウムへと還元されるDNRAの寄与も大きいことが示されつつある。アンモニウムは硝酸イオンや窒素ガスと比べて土壌に保持されやすいため、水田土壌ではDNRAを介して窒素の保持やイネへの窒素供給がなされている可能性が考えられる。そこで水田土壌においてDNRAと脱窒がそれぞれどの程度起きているのか、またどのような微生物群がDNRA反応を担っているのかを明らかにすることを目的とした。
【手法】
新潟県農業総合研究所内の水田土壌を供試した。土壌にグルコースと15NO3–を添加した後、経時的に15NH4+、15N2, 15N2Oを測定し、DNRAと脱窒の速度をそれぞれ算出した。続いてDNRA反応が促進されている条件下において、土壌からRNAを抽出し、亜硝酸イオンからアンモニウムへの還元酵素をコードするnrfAをRT-PCRにより検出し、クローンライブラリー解析を行った。
【結果と考察】
グルコースと15NO3–を添加後、DNRA(15NH4+生成)と脱窒(15N2O+15N2生成)の両方が検出され、その速度は同等であった。nrfAのクローンライブラリー解析の結果、用いた土壌に優占しているAnaeromyxobacter属細菌が有するnrfAに近縁なnrfAが多く見出された。これらの結果から、用いた水田土壌においてDNRAは脱窒と同様に主要な異化的硝酸還元反応であることが定量的に示され、Anaeromyxobacter属細菌がその反応を担う主要な微生物群であることが示唆された。以上の結果に加え、Anaeromyxobacter属以外の細菌群のDNRAへの寄与やAnaeromyxobacter属細菌のN2O還元反応への寄与も含めて発表する。
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