PB-036:圃場における土着ダイズ根粒菌のnirK遺伝子発現とN2O発生
1農環研, 2東北大院農, 3現学芸大, 4現協同乳業
【背景と目的】ダイズ栽培圃場は温室効果ガス一酸化二窒素(N2O)の発生源で、特に収穫期前後に発生が見られる。ダイズ根粒菌は、脱窒遺伝子を持っており、根粒がN2O発生源になっていることが指摘されている。特に、黒ボク土の土着根粒菌はN2O還元酵素(nosZ)を保有しないものが大部分を占める。そこで、ここでは黒ボク土圃場からのN2O発生にダイズ根粒菌が大きく寄与しているかどうかを、根粒菌の亜硝酸還元酵素(nirK)遺伝子発現レベルで検討した。
【方法】本試験では、nosZ遺伝子を保有しないダイズ根粒菌が優占している黒ボク土圃場及びその土壌を使用した。土壌を充填したポットにダイズを播種、1週間栽培後、圃場に移植した。圃場でのN2Oフラックスを連続モニタリングするとともに、ダイズ育苗期(7月中旬)、開花期(8月中旬)および収穫期(10月上旬)に根粒を回収し、nosZ遺伝子の有無をPCRにより検定した。同時期に、圃場より非根圏土壌・根圏土壌・根・根粒を採取し、各部分についてN2O発生ポテンシャルを測定した。さらに、根粒サンプルからRNAを抽出し、RT-PCRにより根粒菌nirK遺伝子およびnosZ遺伝子の発現量を調べた。
【結果と考察】nosZ遺伝子を保有する根粒の割合は、育苗期に2%、開花期に5%、収穫期に3%で、土着根粒菌由来の根粒はほとんどがnosZ遺伝子を保有していなかった。また、採取根粒においてnosZ遺伝子の発現もほとんど検出されなかった。圃場からの採取サンプルのグラム乾燥重あたりのN2O発生ポテンシャルは、育苗期、開花期にすべての部位で低かったが、収穫期の根粒で、他に比べて有意に高かった。一方、採取根粒における根粒菌nirK発現は、内部標準であるシグマ因子sigA遺伝子に対する相対発現量とグラム乾燥重あたりの発現量ともに、収穫期よりも開花期に高い傾向があり、N2O発生ポテンシャルとの関連は見られなかった。根粒菌nirK発現量では、根粒からのN2O発生は説明ができないことが明らかになった。
keywords:一酸化二窒素,脱窒遺伝子,定量PCR