OH-02:新規マクロライド耐性遺伝子mef(C)およびmph(G)を担う遺伝因子とその伝達性
1愛媛大学沿岸環境科学研究センター, 2獨協大学医学部
マクロライド系抗生物質の一種エリスロマイシン(EM)は幅広い分野で使用されている。香川県の養殖場海水から分離された多剤耐性のPhotobacteium damselae 04Ya311株は新規プラスミドpAQU1を持ち、新規EM耐性遺伝子mef(C), mph(G)を有していた。この二つの遺伝子は同時発現で高いEM耐性能を示したが、04Ya311株が分離された養殖場以外からは知られていない。本研究ではmef(C), mph(G)の分布と、様々な環境中における両遺伝子の伝達因子の解明を目的とした。
愛媛県の海水と養殖魚腸内、宜蘭県(台湾)の養殖場海水およびバンコク(タイ)の畜産排水、河川水および海水からEM耐性菌を分離後、PCRによりmef(C)およびmph(G)の検出を行い、両遺伝子の塩基配列から多様性を明らかにした。さらにtraIをプローブとしたサザンハイブリダイゼーションにより伝達因子のサイズを、フィルターメイティングにより伝達性を調べた。
結果、全ての地域からmef(C)およびmph(G)の両方または一方が検出され、全ての塩基配列は99~100%の相同性を示したことから、均質なmef(C)およびmph(G)が陸水・海水環境のEM耐性菌に分布していることがわかった。両遺伝子はVibrio、Photobacterium、Pseudoalteromonas、Shewanella、ProteusおよびCitrobacterなどのγ-プロテオバクテリアに保有され、伝達因子は愛媛株ではpAQU1-likeプラスミドおよびSXT/R391 family ICEであった。台湾株9株中1株ではpAQU1-likeプラスミド、タイ国株の1株ではIncA/Cプラスミドが検出された。よって多様な因子にmef(C)−mph(G)が担われていることがわかった。pAQU1−likeプラスミドおよびICE上の遺伝子の大腸菌への伝達率は10−3~−8であり、これら以外の因子上では検出限界以下または10−8~−10と低かった。
以上から、類似性の高いmef(C)−mph(G)が様々な環境中のEM耐性菌に広まっており、さらにこれらが環境細菌群集中で多様な伝達性因子上に存在することがわかった。
keywords:マクロライド耐性遺伝子,mef(C),mph(G),伝達因子,プラスミド,pAQU1