深海熱水噴出孔での自然発電は生態系に影響するか

Posted On 24 3月 2014
By :

山本 正浩、高井 研
海洋研究開発機構
微生物にとって,この深海熱水発電はどのよう に影響するだろうか? 酸素などの酸化剤に富ん だ海水中に電気的にネガティブな電極が晒された 環境である。これは陰極を用いた電気培養の生育環 境に他ならない。この環境だと,チムニー外壁に取 り付いて熱水レベルの電位の鉱物表面から電子を受 け取り,細胞内膜の電子伝達鎖を介して海水中に存 在する酸素などを電子供与体として ATP を生産す る,いわゆる電気栄養性微生物の存在が期待される。固体電極から直接電子を受け取る微生物として はGeobacter metallireducensが知られているが4),こ の属が深海熱水孔で観察されることは少ない1)。し かしながら,多くの深海熱水孔周辺においては熱水 成分を利用する化学合成微生物群が優占する一方で, 熱水が拡散しにくい厚くて密なチムニー壁の表面で は特異な微生物相が形成されていることから3),こ のような微生物群集が硫化鉱物から電子を受け取っ ている可能性はあると考えられる。さらに,チムニー 壁から電子を直接受け取らない場合でも,酸化鉄が 電気によって還元され水溶性の二価鉄イオンとして 溶出することで鉄酸化細菌が繁殖するといったケー スも考えられる。

3) Takai, K. et al. 2008. J. Geophys. Res. 113: G02031.
4) Gregory, K. B. et al. 2014. Environ. Microbiol. 6: 596.

About the Author