HS-248:セルロースからのエタノール生産 〜身近な草来からアルコールをつくろう〜
東京都立科学技術高等学校
エネルギー源として利用されている石油は化石燃料であり有限物質のため枯渇が懸念されている。そこで、私たちは近頃話題となっているバイオ燃料に興味を持ち、その中でも特にバイオエタノールに注目した。現在、バイオエタノールはトウモロコシやサトウキビなどを原料として生産しており、人間の食料や家畜の飼料との競合が起き、食糧問題にも深くかかわっている。そこで、この問題点を解決できる生産方法はないかと考え、身の回りにあり普段は捨てられている校庭などに生える雑草からバイオエタノールを生成することとした。
植物の細胞壁の主成分はセルロースで、このセルロースはグルコースやリグニンなどが複雑に絡み合って出来ている。そのため、セルロースを分解することで、グルコースへ糖化し、さらにこのグルコースを酵母によってアルコール発酵することでエタノールを生成できると考えた。
私たちは糖化方法として硫酸を使用した方法と微生物のもつセルロース分解酵素を利用した方法を用いて糖化を行った。特に今回は微生物としてアスペルギルス属を利用した。また、この糖化溶液を利用してアルコール発酵を行った。
実験の結果、試料1gを硫酸50mlで糖化し100倍希釈したものの濃度は54ppm、試料5gをコウジカビ2.5g、純水200mlで糖化し100倍希釈したものの濃度は7ppmであった。さらにこの糖化溶液からのアルコール発酵も成功し、エタノールを生成することができた。この結果から硫酸による方法と微生物による方法それぞれで糖化は可能なことが分かった。
しかし、硫酸による糖化は過分解が起きたり、コストがかかったり、環境に悪いという課題がある。このことから微生物による方法のほうが有効的だと考え、今後は使用する微生物を模索し、その培養方法や糖化方法を考えていきたい。また、今回の実験結果から試料に微生物を入れるだけでは高い濃度の糖を得ることが出来ないことがわかった。そこで、硫酸による処理の後さらに微生物によって糖化すれば二段階で分解でき、高い濃度の糖が得られると考え、現在はこの方法も実験中である。さらに、アルコール発酵で用いた酵母は市販されている製パンなどに利用するドライイーストを使用した。今後は発酵後のエタノールの濃度を上げるために、発酵能力のより高い清酒などに利用される酵母を用いてアルコール発酵を行っていきたい。
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