HS-239:天然精油の皮膚一過性細菌叢におよぼす抗菌効果
山村学園 山村国際高等学校
《はじめに》
アロマテラピー(芳香療法)に使用される天然精油(エッセンシャルオイル)は、植物から抽出された芳香成分である。そこで植物由来の芳香成分であれば、アロマテラピーのトリートメント(マッサージ)の際、皮膚一過性細菌叢の感染症を引き起こす悪玉菌(グラム陽性菌の黄色ブドウ球菌・グラム陰性菌の大腸菌)に対して抗菌効果が存在すると考え(仮説)、天然精油の皮膚一過性細菌叢におよぼす抗菌効果の研究を行った。
《材料および方法》
天然精油は、香調表現と芳香成分から6組10種類を選んだ。また比較のために、家庭用除菌・消臭スプレーも加えた。抗菌効果は、測定値の定量化を図り改良したペーパーディスク法を使用した。この方法は、ペーパーディスクに天然精油を浸み込ませ、これを皮膚一過性細菌叢の悪玉菌を塗布した万能寒天培地の中央に置き、悪玉菌の増殖を阻害した最大値の阻止円範囲を基準として、他の天然精油による阻止円範囲とを比較した。
《結果および考察》
天然精油による皮膚一過性細菌叢の悪玉菌におよぼす抗菌効果は、芳香成分がもつ官能基(化合物)の特性と芳香ノート(揮発性)に関係があると考察した。すなわち、官能基(化合物)にアルデヒド・アルコール・エーテル等を含み、さらに揮発性が高いものに強い抗菌効果が表れた。
一方、皮膚一過性細菌叢の悪玉菌等で汚れた衣類の除菌・消臭に効果があると宣伝されている家庭用除菌・消臭スプレー(人工的な化学物質からなる)は、天然精油のレモングラスや、このレモングラスで作ったスプレーよりも抗菌効果が低下した。したがって、人工的な化学物質に頼らない天然精油による悪玉菌への抗菌効果は、環境に優しく、しかもシトラスの芳香にも癒されるなど、アロマテラピーのセルフケアにかなった使用法であると考察した。
《今後の展望》
天然精油の抗菌効果のしくみは害虫駆除にも有効であると知り、化学物質に頼らない、天然精油による環境に優しい昆虫忌避剤の開発に臨みたい。
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