PJ-188:サツマイモの窒素固定活性と共存窒素固定菌の特徴
1島根大学・生物資源
【目的】近年の研究でサツマイモの茎からKlebusiella sp. , Pantoea sp. , Bradyrhyzobium sp.などの窒素固定内生菌が分離され、サツマイモの窒素安定同位体自然存在比や窒素固定内生菌の接種実験からそれらの生物的窒素固定がサツマイモの生育に寄与していることが示唆されている。しかしながら、それらの窒素固定内生菌の品種間や育苗農家間の違い、サツマイモ内での窒素固定活性の分布や栽培期間による違いについては詳しく調べられていない。そこで本研究では異なる品種や育苗農家のサツマイモを収穫期まで圃場で栽培し、定期的にサンプリングしたサツマイモの窒素固定活性を測定するとともに窒素固定内生菌の種類を比較した。
【材料および方法】育苗農家A(埼玉)、B(宮崎)、C(鹿児島)、D(島根)から購入したベニハルカおよび、農家Aから購入したパープルスイートロード、クイックスイートの各苗を島根大学生物資源科学部屋上圃場で栽培した。苗の定植時(6月)、梅雨明け(7月〜8月)、高温期(9月)、収穫期(10月)に各サツマイモ5株を採取し、それぞれの表面を水道水で洗浄した後、葉(先端)、茎(先端、根元、地下部)、根、塊根、根圏土壌のアセチレン還元活性を測定した。その後、活性の高かった高温期の塊根から抽出したDNAを鋳型としてnifHをPCR増幅し、塩基配列を決定した。
【結果】いずれの品種や育苗農家においても単位重量あたりの活性は、茎(地下部)、根、塊根で高く、また、梅雨明け〜高温期で高くなった。しかし、同じ品種や育苗農家のサツマイモでも活性に大きなばらつきがあった。高温期の活性が高い品種ほど、同時期の15N自然存在比が低くなる傾向があり、さらに、収穫期の塊根重や地上部総窒素量も高い傾向が認められた。高温期の塊根から得られたnifHはいずれもEnterobacteriaceaeに属する窒素固定菌もつnifHの塩基配列に高い相同性を示した。優占種は、品種間よりも育苗農家間で異なる傾向が認められた。
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