PJ-172:メタゲノム情報を基盤とした汚染土壌の細菌コンソーシアムの研究
1東北大学 大学院生命科学研究科
本研究室ではこれまでに、土壌微生物コミュニティによる汚染物質分解を包括的に理解する目的で、汚染歴のない閉鎖系土壌サンプルに4種芳香族化合物(3-クロロ安息香酸(3CB)、フェナントレン、ビフェニル、カルバゾール)を添加し、経時的なメタゲノム解析を実施することで、遺伝子プールの変動パターンを明らかにしてきた。しかし一方で、個々の遺伝子の質的量的な変動を詳細に調べると、単純な分解細菌の増加だけでは説明できない点が見出され、共在する他の細菌との協調関係において汚染物質を分解していた可能性が示された。そこで本研究では、汚染土壌から分解活性を有する細菌コンソーシアムや純粋分離株を取得し、ゲノムシーケンスを行なった。これら実際に活性を有する細菌やコンソーシアム内の共在菌のゲノムと上記の経時的メタゲノムを比較することで、汚染土壌における分解菌とその共在菌の量的な関係を考察した。
本汚染土壌から分離できた複数株のBurkholderiaゲノムの16S rRNA遺伝子および株レベルの識別に使用されるMulti-Locus Sequence Typing遺伝子にメタゲノムリードをマッピングした結果、これらの株は3CB分解時に優占したB. caribensisの系統であることがわかった。また一部の分離株にはchlorocatecholを経由する3CB分解酵素遺伝子群が見出されたが、メタゲノムリードからはそれら遺伝子群や既知の分解鍵酵素遺伝子が検出できなかった。よって汚染土壌では3CB分解菌と共に、分解遺伝子を持たないBurkholderiaが爆発的に増殖した可能性が示された。またフェナントレン分解コンソーシアムからは、分解活性を有するMycobacteriumおよび活性を持たない複数種のProteobacteria株が分離され、これら解析においても、分解菌が必ずしも優占しないケースが見出された。
keywords:土壌,共生,メタゲノム,芳香族化合物,バイオレメディエーション