PD-061 (JTK):嫌気性アンモニウム酸化細菌のnirS遺伝子の機能解析
1長岡工業高等専門学校, 2長岡技術科学大学, 3筑波大学
背景および目的:嫌気性アンモニウム酸化(anammox)反応ではアンモニウムが嫌気的に窒素ガスまで酸化され、亜硝酸が電子受容体として用いられる。このanammox反応は以下3種の酵素反応で進行すると考えられており、亜硝酸還元反応が初発反応である; 1) 亜硝酸還元反応、2) ヒドラジン合成反応、3)ヒドラジン酸化反応。亜硝酸還元反応において、チトクロムcd1含有型亜硝酸還元酵素NirSの関与が示唆されているものの、未だ実証されていない。本研究では’’Ca. Scalindua japonica’’および’’Ca. Kuenenia stuttgartiensis’’のnirS遺伝子の機能解析を行った。
方法:脱窒菌 Pseudomonas aeruginosaの染色体上に存在するnirS遺伝子を欠損させた遺伝子組換え体(_nirS株)を作成した。続いて、’’Ca. Scalindua japonica’’および’’Ca. Kuenenia stuttgartiensis’’のnirS遺伝子(それぞれSnirSおよびKnirSと呼ぶ。)をPCR増幅し、シャトルベクターpUCP24へ組み込んだ。作成したプラスミドを_nirS株へ挿入し、_nirS pUCP24-SnirSおよび_nirS pUCP24-KnirS株を得た。遺伝子組換え体の亜硝酸還元活性は15Nトレーサー法で調査した。菌体懸濁液2mLを5mLガラスバイアルへ分注し、15NO2−を濃度2.5mMで添加した。37℃で24時間嫌気培養した後、ヘッドスペースガス(15-15N2,m/z=30)をGC/MSで分析した。
結果:_nirS pUCP24-SnirSおよび_nirS pUCP24-KnirS株、いずれも亜硝酸還元活性が認められなかった。この原因として、SnirSおよびKnirSのシグナルペプチド配列がP. aeruginosaで認識されず、不完全な状態で発現していた可能性が考えられる。つまり、NirSはペリプラズムタンパクであるが、シグナルペプチド配列が認識されなかったため、ペリプラズムに局在できず、matureなタンパク質として機能しなかった可能性がある。現在、SnirSおよびKnirSへのP.aeruginosa由来のシグナルペプチド配列の付加、組換え体の作成および亜硝酸還元活性の測定を行っている。
keywords:嫌気性アンモニウム酸化(anammox),亜硝酸還元酵素(NirS),’’Ca. Scalindua japonica’’,’’Ca. Kuenenia stuttgartiensis’’,異種タンパク質発現