PC-048:日本各地の森林における土壌微生物群集組成と窒素循環プロセスに対する寄与
1東京大学, 2京都大学
窒素循環プロセスの多く(例えば、有機物分解によるNH4+生成、硝化、脱窒)は土壌微生物によって担われている。そのため窒素循環のプロセスや速度は微生物群集の生理強度や規模に大きく左右されていると考えられる。本研究では異なる気候、植生、利用形態、土壌タイプを含む日本各地の森林土壌を対象とし、微生物群集によって窒素循環プロセス、特にNH4+生成と硝化の速度がどのように制御されているのかを明らかにすることを目的とした。
気候、植生、利用形態、土壌タイプが異なる北海道〜沖縄までの全国20地域、計36サイトの森林を対象とした。これらの土壌からDNAを抽出し、定量PCRにより、全細菌・アーキアの16S rRNA遺伝子と全真菌の18S rRNA遺伝子を、アンモニア酸化細菌(AOB)とアンモニア酸化アーキア(AOA)のアンモニア酸化酵素遺伝子(amoA)を定量した。また16S rRNA遺伝子については大規模シーケンス解析を行った。以上のデータと土壌理化学性や窒素循環速度などのデータ(Urakawa et al. 2015 Ecol Res)を併せて、土壌微生物によるNH4+生成と硝化の速度に対する寄与について解析を行った。
すべての森林土壌において16S rRNA遺伝子量は18S rRNA遺伝子量に比べて大きかったが、その差は人工林において天然林に比べて顕著に大きかった。このことから森林の利用形態により土壌微生物群集全体の組成が大きく異なることが示唆された。続いて、天然林において16S rRNA遺伝子量と総NH4+生成速度との間に、またAOAのamoA量と総硝化速度との間に正の相関が見出された一方、人工林ではそのような傾向が見られなかった。このことから特に天然林においてNH4+生成・硝化の速度はそれを担う微生物群の存在量によって大きく規定されている一方で、人工林では他の要因がより強く効いている可能性が示された。以上の結果から、日本の森林では天然林と人工林という森林の利用形態の違いが土壌微生物の群集組成に大きく影響していること、それにより土壌微生物のNH4+生成と硝化の速度への寄与が大きく異なることが考えられた。上記に加えて日本の森林土壌における細菌組成の結果も併せて発表する。
keywords:土壌微生物,硝化,窒素無機化,森林