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P25-32 : ゴエモンコシオリエビのエサは胸毛で飼うバクテリアである
Posted On 20 10月 2014
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1日大・生物資源・応用生物, 2(独)海洋研究開発機構 基幹研究領域 深海・地殻内生物圏研究分野, 3, ,
世界の深海熱水域には体に微生物を付着させて共生(外部共生)するエビやカニやゴカイが存在し、現在その外部共生菌の役割に高い関心が寄せられている。これまでに、我々は沖縄の深海熱水域に生息するゴエモンコシオリエビを用いて外部共生菌相に独立栄養性化学合成細菌やメタン酸化細菌が含まれることを明らかにしている。また、深海外部共生研究に生きた宿主を用いた実験を初めて導入し、生きたゴエモンコシオリエビを用いたトレーサー実験では13CO2や13CH4が外部共生菌相だけでなく、宿主にも取り込まれることを示した。また、ゴエモンコシオリエビは顎脚を用いて外部共生菌が付着する体毛をこそいだ後、顎脚を口に運ぶ行為が観察される。これらの結果から、ゴエモンコシオリエビは顎脚を用いて外部共生菌を経口摂取し、消化管で消化•吸収して栄養を獲得するという有力な証拠が得られた。しかし、ゴエモンコシオリエビは外部共生菌だけでなく、腸内にも細菌を保有するため、そのトレーサー実験では宿主が腸内細菌から栄養を得ている可能性を否定できなかった。
そこで本研究では、外部共生菌がゴエモンコシオリエビに経口摂取され、消化されたことを立証するために腸内の顕微鏡観察や腸内に含まれる細菌の系統解析を行った。また、宿主の栄養源が外部共生細菌である証拠を得るために改良したトレーサー実験を行った。さらに、腸内細菌が宿主の栄養を十分に支えられるかを評価するために、腸内細菌の一次生産能力や化学合成活性を調べた。本研究では腸内細菌ではなく、外部共生菌が宿主の栄養源となる明確な証拠が得られたため、宿主-外部共生菌間の栄養的な共生を示すことに初めて成功した。
keywords:外部共生,化学合成,栄養獲得法,経口摂取,