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P25-19 : 地衣類共在バクテリア相と生物地理
Posted On 20 10月 2014
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1広島大・院生物圏科学, 2情報・システム研究機構 新領域融合研究センター, 3極地研, 遺伝研,
地衣類は世界の陸域に最も広範囲に分布する目に見える生物である。寒冷地や乾燥地、火口など他の生物がほとんどいない極限環境にまで生息している。地衣類は菌類が構造体を、共生藻類が光合成産物を提供しあう共生関係であるが、近年の研究では第三のメンバーとしてバクテリアの存在が指摘されている。しかし、地衣類共在バクテリアの種組成や地理的特性などの知見は不足している。 本研究では南極・昭和基地周辺の氷河周縁域および赤道直下のウガンダのルウェンゾリ山(標高5109m)の氷河周縁域から採取された岩上着生の地衣類(南極のものは形態的にUmbilicaria aprinaとされる)を用いて、真核生物18S rRNA遺伝子を標的に菌類と藻類を、バクテリア16S rRNA遺伝子を標的に共在バクテリア相を、異なる群生地から採取された地衣類間で比較した。得られた真核生物18S rRNA遺伝子の配列をデータベースで検索すると、地衣類を構成している菌類はUmbilicaria yunnana、共生藻類はTrebouxia asymmetricaと高い相同性を示した。バクテリア16S rRNA遺伝子の配列から、共在バクテリア相は、予想以上に多様である可能性が示唆された。また、スフィンゴバクテリアやアルファプロテオバクテリア、ガンマプロテオバクテリアがよく優占して検出される一方で、2011年に新設された新門であるアルマティモナス門に近縁な配列も得られ、今後も、少なくない新奇なバクテリアが検出される可能性も示唆された。また、採取地点間とバクテリア相にどのような関係が見られるのか、生物地理的観点からも検討したい。
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