PA-018:埼玉県内河川を対象とした培養法で検出される浮遊細菌の特徴
埼玉県環境科学国際センター
河川では、海洋や湖沼と比べると細菌叢解析に関する情報が極めて乏しい。河川にどのような細菌が生息しているのかを明らかにすることは、河川の生態系やそれらの細菌を介して生元素(例えば炭素、窒素、リンなど)がどのように循環しているのかを解明する上で、重要な基礎情報となる。演者らは、ガラス繊維シリンジフィルター(GF/F)で大型の微生物を排除した後、ろ液をMR2A寒天平板培地(R2A培地の組成から糖質を除いた)に塗抹する方法で、これまで分離・培養が難しかった、湖沼に優占する様々な浮遊細菌群を、簡便かつ効率的に分離・培養できることを見出した(Size exclusion assay method=SEAM)。本研究では、SEAMを用いて、埼玉県内を流れる様々な河川から浮遊細菌の分離・培養を行い、河川水から検出される浮遊細菌の特徴を明らかにすることを目的とした。培養法による細菌叢解析では、培地による選択性の影響を受けてしまう可能性があるが、純粋分離株を得られる点で大きなメリットを有している。埼玉県内の河川(14地点)について、SEAMによる浮遊細菌の分離・培養を行ったところ、合計237株が得られた。それらは、Polynucleobacter(PnecCとPnecD)、IRD18C08、Limnohabitans、Actinobacteria(Luna-1とLuna-2)などのクラスターに属していた。特に、河川では、IRD18C08クラスターに属する浮遊細菌が得られた菌株のおよそ35%を占めており、様々な地点から高頻度に検出された。IRD18C08クラスターは、湖沼ではそれほど高頻度に検出されることは無く、河川に特徴的なグループである可能性が示唆された。本研究の一部は、科学研究費助成事業(若手研究[B]15K16122)の助成を受けて遂行したものである。ここに記して謝意を表する。
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