嫌気性界の微生物生態研究部会
■ 日時:10月22日(水)19:00 〜 21:00
■ 会場:第3会場(コングレスセンター43+44会議室)
MALDI-TOF MSによる嫌気性微生物の同定
細田晃文(名城大学 農学部)
近年、種々のバイオマーカーを指標としてMALDI-TOF MSを用いた微生物同定法が報告されている。なかでも、MALDI-TOF MSの測定データを基にしたマスフィンガープリント法は臨床分野の細菌識別等に適用されている。しかし、現在のマスフィンガープリント法では、種レベルの識別は可能であるが、株レベルでの識別は困難である。そこで講演者らは、MALDI-TOF MSによるリボソームタンパク質の測定データ(プロテオーム)とS10-spc-alphaオペロンの遺伝情報(バイオインフォマティクス)を融合したプロテオタイピングといえる株レベルでの細菌識別法(S10-GERMS法)を確立した。本法の原理は島津製作所より市販化(Strain Solution)され、微生物分類の分野でも注目されつつある。本講演では、メタン生成アーキア等でS10-GERMS法が適用可能か検討した研究を紹介する。
細菌の嫌気呼吸を環境浄化に活かす-基礎と応用の壁-
吉田奈央子(名古屋工業大学 若手研究イノベータ養成センター)
嫌気性微生物の代謝は、メタン発酵をはじめとして酸素曝気が不要な省エネルギーな環境浄化技術として古くより利用されてきた。本発表では、発表者が取り組んできた2つの異なる嫌気呼吸細菌研究について、基礎研究の結果と応用へと発展する上での課題について取り上げる。第一に、脱ハロゲン化呼吸細菌研究について、これまでに分離または集積したDehalococcoides、DehalobacterおよびGeobacter属の遺伝的・生理学的特性の違いから浄化に用いる際のメリット・デメリットについて述べる。第二に、近年取り組んでいる酸化グラフェンを生物学的に還元し電極として用いる微生物燃料電池において、Geobacter等の分離菌株の遺伝的・生理学的性質と実廃水処理リアクターに応用した際の課題について紹介する。