大会への招待状:キーワードは,連携と若手
確か,学部4年生のときだったと思う。私の卒論は,土壌低栄養細菌の研究であったが,指導教員であった服部勉先生の勧めで,東大・海洋研で開催された海洋微生物の研究会に参加した。そこで,海洋微生物の研究を知り,その分野の先生方や大学院生と交流する貴重な機会を得た。これが,私の学会に関する原体験である。その後も,微生物生態研究会(本学会の前身)の前日に開催される若手の会に参加して,サイエンスで交流するピュアな楽しさを知り,競争する心を鍛えた。先行き不安な院生・ポスドク時代には,同世代と語り合い,励まし合った。学会に対するこの感覚は,今でもあまり変わっていない。
学会は,研究成果を公表し,議論し,情報を収集する場であることは言うまでもない。誇らしげな発表に見えるときもあれば,綱渡りのときもある。どちらに転ぶかは,サイエンスを考える深さで決まる。考えが深みにはまると,自分が孤立したように思えることがある。そんなとき,学会に行くと,その孤立感が解消され,道が開けた気がすることもあるし,逆に,さらに深まることもある。一番楽しくなるのは,同類をみつけたときであろう。イントロなしで,問題のポイントをすぐに議論できる仲間と巡り会うことは幸せな出来事である。個々の課題追究に加えて,最近は,チームとしての取り組みや議論が重要になってきた。気候変動や窒素負荷など,地球環境の変化が深刻になるにともない,生物地球化学とつながる微生物生態学の分野の展開が求められている。このような時代こそ,学会活動の役割が大事になると思う。
第30回大会のキーワードは,「連携」と「若手」である。前者については,豊橋大会(第28回大会)の斬新なアイデアを受け継いで,シンポジウムの企画を公募する。微生物生態学を俯瞰し,課題を練り上げ,チームを組織して,シンポジウム企画を沢山提案して頂ければ,有り難い。一般発表も,例年通り,口頭発表とポスター発表を行う。ただし,口頭発表は,「若手」を中心にする計画である。なお,第30回大会は,The 7th Japan-Taiwan-Korea (JTK) International Symposium on Microbial Ecologyを同時に開催する。こちらの方は,“Microbes and Climate Change”というテーマを掲げた。その1日目には,若手が企画しプログラムを作るセッションを設けている。
今から15年前,第16回大会(大会委員長,高村義親先生)が土浦で開催された。その大会からポスター発表が始まったと記憶している。そのとき参加された方々は,土浦の街並みを思い出されるかもしれない。県南の中心地としての役割は,この15年間でさらに,つくば市に移ってしまったが,表通りから一歩奥に入ると,歴史と文化が息づく建物が残っていて,探訪できる楽しみがある。土浦は,その昔,飛行船ツェッペリン伯号が世界一周の途中に立ち寄った町でもある。その一歩入ったところにある,明治の時代から続く料亭には,その当時の飛行船飛来をめぐる写真と資料が展示されている。飛行船に続いて,リンドバーク夫妻も北太平洋を横断して当地を訪れている。このように紐解くと,JTK Symposiumを当地で開催するのも無縁なことではないであろう。
第30回大会の企画への賛同をお願い申し上げるとともに,多くの方々のご参加をお待ちしております。
日本微生物生態学会第30回大会委員会委員長 太田寛行