O34-08 : 共生化学合成細菌の影響:Anthosactis sp.の脂質と脂肪酸
Posted On 20 10月 2014
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1石川県立大, 2, 3, ,
【目的】化学合成生態系のシロウリガイ類は、水温1-5ºC、暗黒で高圧下の極限下に生息しイオウ酸化型細菌と共生し、それらからのみ栄養を得ている。本報告で、ナギナタシロウリガイに付着するイソギンチャク及びナギナタシロウリガイの脂質成分を比較した。【方法】日本海溝(6,367m, 6K、374潜航)で、イソギンチャクおよびナギナタシロウリガイ(Calyptogena phaseoliformis)を採集し、それぞれの脂質について明らかにした。【結果と考察】イソギンチャクの主要不飽和脂肪酸に、種々のn-4 NMI-PUFAと相当量のEPA、DHAの両者が見出された。n-1やn-4NMI-PUFA類はナギナタシロウリガイに特有であるが、EPAやDHAは光合成由来と考えられるn-3PUFAである。本イソギンチャクは両者をあわせ持つことから、化学合成細菌由来の栄養と外界の光合成由来の栄養の両方に依存することが推定された。n-4NMI-PUFAのみを有するナギナタシロウリガイは外界と全く隔絶し、独立栄養細菌にすべての栄養を依存するが、ナギナタシロウリガイ軟体部と薄い殻を隔てたのみの距離において、相当量のn-3PUFAが見出されたことから、化学合成生態系は、系全体が閉じられているのではなく、ナギナタシロウリガイの様に化学合成細菌のみに依存するものと、刺胞動物のように外界の様々な栄養も取り込み、利用するものがいることが明らかとなった。ナギナタシロウリガイは、近傍にn-3PUFA源があるにも関わらず、共生化学合成細菌のみに依存し、共生細菌は完全な独立栄養細菌であることが、化学分析からも支持された。
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