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O34-01 : 西南日本の付加体深部地下圏における微生物ポテンシャルと炭素・窒素循環
Posted On 20 10月 2014
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1静大院・理・地球科学, 2静大・理・地球科学, 3, ,
静岡県中西部、愛知、紀伊半島、四国、九州、そして沖縄までの太平洋側の地域は、付加体と呼ばれる厚い堆積層からなり、その深部地下圏には大量の嫌気性地下水と付随ガスが存在している。本研究では、静岡県中西部の付加体の分布域に構築された温泉用掘削井から地下水と付随ガスを採取し、環境データ、ガス組成、炭素安定同位体比を測定した。さらに、地下水に含まれる微生物群集の遺伝子解析と嫌気培養を試みた。その結果、多くのサイトにおいて付随ガスに大量のメタン(98%)が含まれていることが明らかとなった。一方、沿岸から離れた山間部のサイトでは、メタン以外に20-50%の割合でN2が含まれる付随ガスが見られた。メタンとDICの炭素安定同位体比分析の結果、多くのサイトにおいて微生物起源のメタンが存在することが示された。さらに、16S rRNA遺伝子の解析結果より、水素発生型発酵細菌と水素資化性メタン生成菌の優占が明らかとなった。また、地下水に有機物を添加した嫌気培養の結果、水素発生型発酵細菌と水素資化性メタン生成菌の共生によって高速にメタン生成が起こることが示された。一方、付随ガスにN2を多く含むサイトの地下水からは脱窒菌に由来する16S rRNA遺伝子も検出された。そこで、地下水に含まれる脱窒菌を対象とした培養を試みた結果、脱窒による高いN2生成ポテンシャルが確認された。一連の研究結果より、付加体が分布する広範囲の深部地下圏において水素発生型発酵細菌と水素資化性メタン生成菌の共生によってメタンが生成されることが明らかとなった。また、山側の付加体の深部地下圏では脱窒によるN2生成も行われていることが示された。
keywords:付加体,深部地下圏,嫌気性地下水,発酵,メタン生成