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O34-06 : グリーンランド、カナック氷河上のクリオコナイト粒の形成プロセスと分布
Posted On 20 10月 2014
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1極地研・新領域融合研究センター, 2極地研, 3千葉大・理・地球科学, 千葉大院・理・地球科学, 気象研・気候研
世界各地の氷河の表面からは、クリオコナイト粒と呼ばれる直径約1mmの粒子が頻繁に報告されている。これらは様々な好冷性微生物の増殖により形成され、腐植物質が集積することで、氷河表面を黒く変化させる。そのため氷河表面での太陽光の吸収が大きくなり、氷河の融解が促進される。特に氷河融解による海面上昇への寄与が高いグリーンランド氷床では、氷河上の暗色域の面積が顕著に拡大してきている事が明らかとなり、微生物の氷河融解への寄与が特に注目され始めてきている。しかしながら、このクリオコナイト粒の形成のプロセスを発達段階の変化に着目して研究した例はない。 そこで本研究では、グリーンランド北西部、カナック氷河の標高上の異なる5カ所から採取されたクリオコナイトを粒径サイズにより計6分画に分けて、これらのバクテリア16S rRNA遺伝子の解析を行った。その結果、氷河の下流、中流、上流では、クリオコナイト粒を形成するバクテリア相が異なり、特に中流部ではクリオコナイト粒の骨格を形成する糸状のシアノバクテリア(Phormidium pristleyi)の比率が高く、クリオコナイト粒の重量も多かった。微生物の増殖に影響をあたえると思われる物理・化学的要因(高度、鉱物粒子量、栄養塩濃度など)と一次生産者の分布を多変量解析で比較した結果、特に細かい鉱物粒子量がPhormidium pristleyiと高い相関を示した。この事からカナック氷河では、細かい鉱物粒子によりクリオコナイト粒の骨格を形成するPhormidium pristleyiの増殖が促進され、クリオコナイト粒が多く発達する事が示唆された。
keywords:極限環境,低温,氷河,好冷性,バイオフィルム