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P24-3 : 氷河環境に特化したコオリミミズの共生細菌群集構造解析
Posted On 20 10月 2014
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1東工大 院生命理工, 2国立極地研, 3千葉大 院理, 京大 野生動物研究センター,
氷河という極限環境においても、低温に適応した生物群集が独自の生態系を構成している。我々は、北米大陸の氷河に生息するコオリミミズMesenchytraeus solifugusを題材にした共生細菌群集構造解析を行い、氷河環境中での動物−腸内細菌共生系の実態解明を目指した。
コオリミミズの全身からDNAを抽出し、真正細菌16S rRNA遺伝子をPCR増幅、サンガー法で配列解析を行った。その結果、生息環境の氷河から検出された細菌と同一の種や、他の低温環境から検出される既知の細菌に極めて近縁な種が多く検出された。これらの細菌は生息していた氷河からコオリミミズ体内に取り込まれたものと考えられる。その一方で、氷河環境から検出例がなく、動物の腸内に特異的に共生するMollicutes綱の系統群が検出された。このうちの1種について、FISHによる種特異的検出を行なったところ、コオリミミズの腸壁に局在していることが判明した。
以上のことから、コオリミミズは、氷河へ進出する際に腸内をはじめとする共生細菌群集の多くを氷河環境由来の細菌に置き換えたものの、一部の細菌種との共生関係は維持したまま、共に氷河環境に適応した可能性が示唆された。これらの情報は、コオリミミズの氷河環境への適応過程や、氷河生態系におけるコオリミミズとその共生細菌群集のニッチを解明する上での基盤になると考えられる。
keywords:glacier ecology,psychrophilic,enchytraeid,gut bacteria,16S rRNA