P23-10 : 緑色糸状性光合成細菌が優占する温泉微生物群集における硫化水素の嫌気的な硫酸への酸化
Posted On 20 10月 2014
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1首都大学東京理工学研究科生命科学専攻, 2, 3, ,
長野県中房温泉では緑色糸状性光合成細菌Chloroflexus aggregansが優占する微生物群集が発達している。C. aggregansは過去の遺伝子解析や顕微鏡を使った硫黄顆粒の観察から、光合成をおこない硫化水素を単体硫黄まで嫌気的に酸化すると考えられる。しかし採集した微生物群集には硫黄顆粒の蓄積が少量しか見られないため、C. aggregansによって温泉水中の硫化水素から作られた単体硫黄は他菌によって消費されていると考えられる。そこで本研究では温泉微生物群集による、硫化水素の嫌気的な変換過程について明らかにすることを目的とした。
まずC. aggregans単離株を光照射嫌気条件で培養し、硫化水素の減少と硫酸が増加しないことを確認した。次に温泉微生物群集を採集し、人工温泉水を用いて65℃・光照射嫌気条件で培養した。すると硫化水素は減少し、硫酸は増加した。また硫酸還元の阻害剤として知られるモリブデン酸を加えて同様に培養すると、硫化水素は消費されたが硫酸の生成のみ阻害された。それらのことからこの微生物群集では、C. aggregansが硫化水素から生成した単体硫黄は他菌に利用され硫酸まで酸化されたと予想した。
嫌気的に単体硫黄を利用する代謝として、硫酸と硫化水素を生成する単体硫黄の不均化が知られている。単体硫黄の不均化は主に硫酸還元菌に見られる代謝であり、硫酸還元同様モリブデン酸によって阻害されるとの報告がある。本研究からこの微生物群集では単体硫黄の不均化を行う細菌が、C. aggregansによって硫化水素から作られた単体硫黄を利用している可能性が示唆された。
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