P21-19 : 富士山麓において降雨と降雪が深い地下水と浅い地下水へ与える直接的な影響のサインを探る
Posted On 20 10月 2014
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1静岡大学大学院 理学研究科, 2大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所, 3, ,
日本最大の火山である標高3,776 mの富士山の地下圏には膨大な地下水が蓄えられている.主として溶岩流の末端から湧き出す湧水は,36Cl/Clを用いた手法から平均滞留時間が30年程度と推定されている(Tosaki et al., 2011).一方で2011年8月の豪雨後,湧水のpHの明らかな減少が認められた.これは新しく供給された雨水が比較的短い滞留時間で地下水に混合し,その混合水が湧出していることを示唆するだろう.私達の富士山麓地下水における研究から好熱性細菌に近縁なクローンを発見し,微生物DNAが地下水の起源における深度情報を持つ可能性も示されている(Segawa et al., in review).この発見から微生物DNA解析は水の安定同位体分析や化学分析とは異なる側面から地下水の履歴を明らかにできるのではないかと考えている.本研究では水の安定同位体分析や化学分析に加え,新たに微生物解析を行うことで雨水の湧水への直接的影響を明らかにしようとした.富士山西麓における地表水と表層水の流れがモデルから明らかとなっている流域において降雨強度の強い降雨をターゲットに雨水と湧水の集中的観測を行った.水の安定同位体から夏以降融雪の湧水への混入が低下する可能性を示し,長い平均滞留時間の中で融雪の影響も敏感に受けていることが考えられた.また,3つのアプローチそれぞれで降雨強度の強い降雨後,雨水の直接的混入のシグナルが浅い地下水でみられたが,深い地下水には雨水の直接的影響がみられず,雨水の直接的影響が深部まで及んでいないことが示唆された.
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