P21-16 : 多摩川上流域における光合成細菌の系統的多様性と環境
Posted On 20 10月 2014
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1首都大学東京 大学院理工学研究科 生命科学専攻, 2, 3, ,
河床には藻類を一次生産者とするバイオフィルムが発達している。これまでの研究で、東京都青梅市を流れる多摩川河床バイオフィルムには、好気性光合成細菌が多数種共存しており、中には新属新種と考えられるものも含まれていた。多様性と環境との関係を知るため、本研究ではさらに上流域で、日照や栄養塩流入量が異なると考えられる奥多摩町の河床を対象に、光合成細菌を分離・培養し、その系統を解析した。
2013年7月、河床の石を20m2にわたる範囲から採取し、付着しているバイオフィルムをかきとり、酵母エキス等を含む寒天平板培地に直接塗布して30℃、暗所・好気条件で培養した。生育したコロニーの吸収スペクトルを測定し、バクテリオクロロフィルを含むと考えられるものを選抜した。得られた13株について16S rRNA遺伝子の塩基配列を決定し系統解析したところ、大きく10のOTUに分けられた。
このうちプロテオバクテリアのα1およびα4サブグループに分類される4OTUは、青梅市からこれまでに分離している好気性光合成細菌と高い相同性を示した。一方、残りの6OTUはSphingomonas属(2OTU)、Leptothrix属(2OTU)、Inhella属(1OTU)またはRhodoferax属(1OTU)に相同性を示した。これらは、同季節に採取した青梅市の試料からは検出されていない。
以上から、青梅市と奥多摩町の河床バイオフィルムに存在する光合成細菌の種構成は異なることが示唆された。また、系統的位置から奥多摩町の3OTUは好気的または嫌気的光合成細菌の可能性があるが、残り7OTUは好気性光合成細菌であると考えられる。
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