P21-15 : 藻類産生有機物を基点とした湖沼微生物ループに関与する細菌群の季節変化
Posted On 20 10月 2014
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1東京大学 大学院工学系研究科, 2, 3, ,
湖沼における微生物ループは、溶存有機物を基点とする炭素フラックスの経路として重要である。しかし、微生物ループの構造については不明な点が多い。そこで本研究では、藻類産生有機物を同化する湖の細菌群をDNA安定同位体プローブ法(DNA-SIP)によって同定することを試みた。12C/13C-重炭酸を添加した無機培地でシアノバクテリアMicrocystis aeruginosa(NIES-843)を無菌的に培養し、培養液をろ過して溶存態の藻類産生有機物を調製した。2013年6月及び10月に神奈川県津久井湖より採水した表層水に、終濃度が1 mgC/Lとなるように藻類産生有機物を添加した。20℃、暗所で静置培養し、全菌数が最大値に達した時点でDNA-SIPによる分析を実施した。6月の湖水では、藻類産生有機物を添加して1日後に全菌数が最大値に達した。DNA-SIPの結果、Limnohabitans属に近縁な細菌群が、選択的に藻類産生有機物を同化していることが確認された。同じ藻類産生有機物を添加した10月の湖水では、約2日後に全菌数が最大値に達した。藻類産生有機物を同化した細菌群としては、主にNovosphingobium属に近縁な細菌群が検出された。また、その他にもIlumatobacter属や6月の湖水で同定されたLimnohabitans属も藻類産生有機物を同化していることが確認された。このことから、Limnohabitans属は6月と10月で共通していたものの、藻類産生有機物を同化する細菌群が季節に伴って遷移したことが推察された。
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