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O35-03 : 昆虫-細菌内部共生における協力的な殺虫剤解毒メカニズム
Posted On 20 10月 2014
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1産総研・環境管理技術研究部門, 2産総研・生物プロセス研究部門, 3, ,
細菌との内部共生は自然界で広くみられる一般的な現象である。動物や植物の体内において、共生細菌は食物の分解や不足栄養素の供給に寄与し、宿主の成長と繁殖に重要な役割を果たす。最近我々は、農業害虫であるカメムシ類が土壌中のフェニトロチオン(有機リン系殺虫剤の一種で通称MEP)分解細菌であるBurkholderia sp. SFA1株を体内に共生させ、MEP抵抗性を獲得するという驚くべき現象を発見した。本研究では、共生細菌による体内解毒の機構解明を目的としてSFA1株のオミクス解析(genomics、transcriptomics、proteomics)および遺伝子破壊実験を行ったため報告する。 ゲノム解析およびRNA-seq解析により、本菌が既報の2種の分解経路を組み合わせて利用することが推定された。また、プロテオーム解析および遺伝子破壊実験により、MEP耐性にはその分解酵素だけでなく、菌体外への物質排出ポンプも重要であることが示唆された。さらにMEPおよびその分解産物(3-methyl-4nitrophenol (3M4N))を用いた毒性試験から、SFA1株にとってMEPは無毒であり、3M4Nが有毒であることが示された。カメムシにはMEPが有毒で3M4Nは無毒であることが知られており、両者の利害の一致によって協力的かつ効率的に殺虫剤の体内解毒が行われている可能性が示唆された。本発表ではこれらの結果に加え、カメムシ共生状態(in vivo)におけるSFA1株のRNA-seq解析や、MEP分解経路の遺伝子破壊実験についても報告し、共生細菌による体内解毒の分子メカニズムについて議論する。
keywords:内部共生,昆虫,農薬分解,RNA-seq,Burkholderia