PJ-187:RNA干渉によるミカンキジラミ共生関連遺伝子の機能解析の試み
1豊技大院・工 ・環生工, 2豊技大・EIIRIS
ミカンキジラミ(Diaphorina citri)は、カンキツグリーニング病を媒介する、世界的に重要な農業害虫である。本種は腹部体腔内に「bacteriome」と呼ばれる共生器官を持ち、この細胞内に、世代を超えて垂直感染を繰り返す2種類の共生細菌Candidatus Carsonella ruddii(Gammaproteobacteria)及びCa. Profftella armatura(Betaproteobacteria)を保有する。当研究室の先行研究により、これら共生細菌のゲノムは極端に縮小し、生存に必須と思われる多くの遺伝子を欠くことが明らかとなっている(Curr Biol, 2013)。さらに、この脆弱な共生細菌の生存を支える宿主の役割を知るべく、bacteriomeのRNAseq解析を行ったところ、bacteriome特異的に転写が亢進しながら、類似配列がデータベース上に存在せず、機能推定の困難な宿主遺伝子が多数見出された(未発表データ)。これらの遺伝子は、共生系の維持に枢要な役割を担うと目される一方、他の生物には存在しないため、選択性が高く、環境負荷の低い新規防除法開発の標的として有望である。現在我々は、上記遺伝子の一つであるDcitri_1に注目し、RNA干渉法を用いた機能解析を試みている。昨年の大会では、RNA干渉によるDcitri_1発現抑制の成功について報告した。本大会では、Dcitri_1の機能推定の前提として、1) キジラミの発生に伴うDcitri_1の発現変動、および2) 共生細菌2種の感染・増殖動態について報告する。1は定量RT-PCRによるもので、卵、1〜5齢幼虫、未熟成虫(羽化後1日)、成熟成虫(羽化後5・10・20日)、老齢成虫(羽化後35日)におけるDcitri_1の転写産物量を測定した。その結果、羽化後5日の雄成虫において特に発現が亢進する傾向が見られた(Tukey-Kramer検定、p<0.05)。2はFISH(fluorescence in situ hybridization)によるもので、共生細菌2種の卵への感染動態や、その後の増殖の様子が明らかとなった。今後は、これらを踏まえ、Dcitri_1発現抑制による共生系への影響を精査し、遺伝子機能の解明を目指す。
keywords:symbiosis ,RNAi