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P25-4 : 植物根圏における高親和性水素酸化細菌の生理生態学的特性の解明
Posted On 20 10月 2014
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1産総研・生物プロセス研究部門, 2Centre INRS-Institut Armand-Frappier, Canada, 3, ,
近年になって、既知の酵素の下限からさらに100倍低濃度の水素を酸化可能な高親和性ヒドロゲナーゼを持つStreptomyces属放線菌が土壌から発見され、大気中の水素の取り込みに主要な役割を担うと推定された。さらに、先の我々の研究から、高親和性水素酸化細菌は土壌だけでなく植物体内にも広く存在することが示唆され、植物表面および体内に局在して大気水素を消費するStreptomyces属放線菌の獲得に成功した。しかしながら、従属栄養細菌として知られるStreptomyces属放線菌が、どのような環境において水素を取り込む代謝様式を機能させるかは明らかとなっていない。植物は光合成同化炭素の10%以上を有機酸やアミノ酸などの形で根表面から滲出するため、根圏域は非根圏域に比べて有機物に富んだ環境である。そこで本研究では、高親和性水素酸化細菌の水素酸化活性に植物が与える影響を明らかとすることを目的とした。イネを無菌土耕栽培した系と土壌のみの系の各々に分離株を接種したところ、根圏土壌では非根圏土壌と比較して、菌糸体の細胞が多く見られ、水素酸化活性は低いことが確認された。無菌水耕栽培したイネの水耕液を分離株の胞子に添加した結果、根滲出液によって菌糸体成長への誘導が見られた。さらに、栄養濃度の異なる人工培地上での水素酸化活性を比較したところ、栄養条件の限られた培地で生育した細胞ほど高い活性を示した。以上より、Streptomyces属放線菌は栄養制限下では水素酸化によりエネルギーを獲得すると推察された。このため、根滲出物が形成する根圏域では非根圏域と比較して水素の取り込みが抑制されたと考えられた。
keywords:エンドファイト,イネ,植物共生,放線菌,Streptomyces