PL-214 (JTK):反射顕微鏡法により見えてくる微生物腐食とバイオフィルムの関係性
1筑波大・生命環境, 2筑波大院・生命環境, 3産総研・環境管理, 4秋田大院・工学資源学研究科, 5筑波大・生命環境系
微生物腐食(MIC)は微生物の活動が主要な因子とされる金属腐食であり、常温・中性環境下においても金属材料が大きな腐食損傷を受ける場合がある。よって、その理解と防止が求められている。MICの発生した金属表面には微生物によるバイオフィルム(BF)の形成が観察されており、BF形成がMICの進行に大きな影響を与えていることが考えられていた。しかし、技術的な問題からBF形成過程とMICの進行が同時に観察された例はなく、両者の関係性についての知見は乏しい。そこで我々は、当研究室の反射顕微鏡法を基本とした新しい観察手法であるCOCRM(Continuous-optimizing Confocal Reflection Microscopy)法1, 2)を用いることとした。COCRM法では反射光をシグナルとして検出するため、BFの形成と金属表面の腐食の発生を継時的かつ無処理で観察することが可能であり、MICの解析に非常に有用な観察手法と考えらえた。
ステンレス鋼(SUS303)を千葉県富津にて採取した海水に浸漬し,金属表面に形成されたBFから細菌を単離した。単離した細菌を滅菌した海水に播種し,そこにステンレス鋼を浸漬させることで金属表面上にBFを形成させた。共焦点顕微鏡を用いてCOCRM法にて観察を行った。
実際にCOCRM法を用いた観察により、金属表面へのBF形成とMICの進行を同時かつ継時的に可視化することに成功した。この観察報告は本実験が初めてである。金属表面には立体的なBFが形成される様子が確認され、BFの内部には微生物の代謝産物であると考えられる細胞外多糖が存在することが示された。さらに、BF下の金属表面には腐食孔と推測される孔が観察された。
本発表では、COCRM法を用いたMICの新規観察手法に加え、それを用いることで得られたBFとMICに関する知見を報告する。
keywords:バイオフィルム,微生物腐食,反射顕微鏡法