PJ-185 (JTK):Bradyrhizobium elkanii の3型分泌系によるミヤコグサ根粒形成の制御
1東京農工大学, 2京都産業大学, 3東北大学
根粒菌は様々なタンパク質分泌システムを持ち、特に3型分泌系により宿主植物に直接エフェクタータンパク質を分泌することができる。根粒菌の分泌するエフェクターは、宿主植物に依存して、根粒形成を促進または阻害する。これまで当研究室では、ダイズ根粒菌Bradyrhizobium elkanii USDA61株とRj4遺伝子型保有ダイズとの非親和性について解析を行い、根粒菌のエフェクターが根粒形成を阻害することを明らかにしてきた。しかしダイズは遺伝学的解析が容易ではないことから、その先にあるエフェクターの作用機構について植物側の解析は容易ではないと考えられている。
そこで本研究では、植物遺伝学の研究基盤が整っているモデル植物であるミヤコグサのGifuを用いて、GifuとB. elkanii USDA61株との非親和性の分子機構を明らかにすることを目的とした。
3型分泌系の変異株であるrhcj変異株を用いた接種試験の結果、rhcj変異株ではGifuに根粒形成したのに対して、野生株では根粒形成があまり見られなかった。これはUSDA61株の3型分泌系により分泌されるエフェクタータンパク質が植物の防御応答を引き起こし、根粒形成を阻害していることを示唆している。
またトランスポゾン変異株を用いてGifuに根粒形成する変異体をスクリーニングした結果、10株のTn5変異株がGifuに感染し、根粒形成をすることが明らかになった。しかし根粒形成は、感染途中のprimordiaもしくはbumpの段階で止まっており、正常な有効根粒を形成する変異体は単離されなかった。原因遺伝子の同定を行った結果、複数の遺伝子にトランスポゾンの挿入が確認された。
エフェクター変異体の接種試験の結果、複数のエフェクターがGifuとの非親和性に関与していることが明らかとなった。単一のエフェクターの変異体では、bumpやprimordiaを形成したが、有効根粒を形成するエフェクター変異体は見つからなかった。この結果、GifuとUSDA61の非親和性では、複数のエフェクターが相加的に根粒形成を阻害していることが示唆された。
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