PD-060 (JTK):Nitrosomonas europaeaに対するクオラムセンシングの効果
1横国大院工
【目的】近年、微生物同士はシグナル物質という低分子化合物を介してコミュニケーションし、様々な遺伝子発現に互いに影響を及ぼし合っていることがわかっている。この機構はクオラムセンシングと呼ばれており、シグナル物質を人為的に利用することにより微生物機能を制御しようとする試みがなされている。本研究室でも活性汚泥へシグナル物質を添加した時の効果を評価してきた。その結果、特定のシグナル物質の添加により窒素除去プロセスにおいて律速となっている硝化活性が向上することを確認している。本研究では、この硝化の活性化がどのようにして生じているのか、硝化細菌のモデル株であるNitrosomonas europaeaを用いた実験により、そのメカニズムを解明することを目指した。【方法】本研究では組み換え体N. europaeaを用いてシグナル物質の効果の評価を行った。この組換え体はHydroxylamine oxidoreductase (HAO)のプロモーターを利用したレポーターアッセイ系である。HAOはアンモニア酸化反応を担う主要な酵素である。つまり発光強度とHAOの発現量に相関性があることを利用してWild typeを用いた実験では見過ごされていた遺伝子発現量変化を追跡することができる。この組換え体N.europaeaに対してシグナル物質を添加し、培養を開始した後、発光量およびアンモニア濃度測定を行うことによりクオラムセンシングの影響を評価した。【結果および考察】シグナル物質(Acyl homoserine lactone C12,C14)の添加により組換え体N.europaeaの発光量が増加することを確認した。この結果はHAOの発現が促進することを示唆している。さらにシグナル物質を30 nMという低濃度で作用させても同様の発光量の増加を確認したためN.europaeaには高感度にシグナル物質を感知するシステムが備わっていると考えられる。そして、シグナル物質を作用させた状態で培養を続け、アンモニア濃度を追跡することにより、非添加系と比較して硝化活性が高まることを確認した。これらの実験から活性汚泥中においてもシグナル物質はN.europaeaに直接作用し、硝化を活性化させているというメカニズムが示唆された。
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