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O35-06 : 深海底熱水活動域に生息する巻貝類とその共生細菌の群集遺伝学的解析
Posted On 20 10月 2014
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1北海道大・院水産科学院, 2海洋研究開発機構 深海・地殻内生物圏研究分野, 3Department of Zoology, University of Oxford, Department of Ocean and Earth Science, University of Southampton, 京大院・農・応生
深海底熱水活動域は暗黒・高圧・超高温熱水が噴出する極限環境にありながら、化学合成独立栄養細菌の一次生産に基づく豊かな生態系を育んでいる。現場に固有の大型生物の多くは、その幼生期に周辺環境に存在する化学合成独立栄養細菌群の中から特定のものを選抜し、共生関係を構築すると考えられている。宿主と共生細菌はお互いに強い依存関係にある一方で、環境獲得型の共生では一般に宿主と共生細菌の共進化は起りにくいと予想される。深海底熱水活動域には、環形動物や巻貝、甲殻類、二枚貝など多様な無脊椎動物が生息しており、それらの共生細菌はGammaproteobacteriaとEpsilonproteobacteriaに大別できるものの、属レベル・種レベルではかなり多様である。化学合成生態系が発見されてから35年以上経過しているが、現場に生息する多様な大型生物と共生細菌、両者の群集遺伝学的特徴を包括的に解析した研究例は皆無である。 本研究は、南西・中央インド洋海嶺、南部マリアナトラフの熱水活動域に優占する大型巻貝を対象として、個体毎に宿主と共生細菌について複数のハウスキーピング遺伝子の塩基配列を決定し(MLSA法)、群集遺伝学的特徴を解析した。 その結果、いずれの海域・生物においても、宿主と共生細菌の明確な共進化は見られない一方で、宿主生物毎、共生細菌毎、海域毎に、様々な群集遺伝学的特徴が見いだされた。例えば、スケーリーフットの共生細菌は、個体間で塩基多様度が著しく低く、極めて強い選択圧を受けていると考えられた。本発表では、化学合成共生系における宿主と共生細菌の群集動態について包括的に議論したい。
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