Previous Story
O35-05 : 比較ゲノムで解き明かすBurkholderia共生細菌の共生因子: 接着性線毛(Tad pili)
Posted On 20 10月 2014
Comment: Off
1産総研・生物プロセス研究部門, 2基生研, 3放送大・教養, 金沢大・学際科学実験センター, 総研大院・生命科学
多くの動植物がその体内の共生微生物と緊密な相互作用を行っているが、共生の遺伝的基盤についてはいまだ不明な点が多い。大豆の重要害虫であるホソヘリカメムシ(Riptortus pedestris)はBurkholderia属の共生細菌を毎世代環境土壌中より獲得し、中腸後端部に発達する袋状組織(盲嚢)に保持している。本研究では、ホソヘリカメムシ‐Burkholderia共生系における共生の遺伝的基盤の解明を目指して、既にゲノム配列が決定済みの共生性および非共生性Burkholderia属細菌全38株の比較ゲノム解析を行い、ホソヘリカメムシのBurkholderia共生細菌に特異的な遺伝子を多数見出した。その多くは機能未知の遺伝子であったが、接着性線毛の一部をコードするTad(tight adherence)遺伝子群やリポ多糖生合成タンパク質など、細胞表層構造に関連する遺伝子も複数含まれており、これらがホソヘリカメムシ‐Burkholderia共生系における共生者側の”共生因子”である可能性が示唆された。我々は、この共生性Burkholderiaに特異的なTad遺伝子群に着目し、遺伝子破壊株の作成およびホソヘリカメムシへの感染実験を行った。その結果、Tad遺伝子群破壊株のホソヘリカメムシ盲嚢への感染定着力は、野生株と比べて著しく劣ることが明らかとなった。これはTad遺伝子群がホソヘリカメムシ‐Burkholderia共生系における重要な共生因子であることを意味する。発表では、Tad遺伝子群が共生の成立において果たす役割やTad遺伝子群の進化的起原についても議論したい。
keywords:Symbiotic bacteria,Burkholderia,Comparative genomics,Tad pili,