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O35-02 : 動物での新規オルガネラ進化?細菌由来の昆虫遺伝子からタンパク質が合成され、共生細菌に輸送される
Posted On 20 10月 2014
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1豊橋技科大, 2理研・BRC, 3岩手医科大, 東工大, 遺伝研
ミトコンドリアや葉緑体などのオルガネラは、原始真核生物に取込まれた共生細菌の末裔である。その成立過程では、1) 共生細菌自身や、その他の細菌から宿主ゲノムに遺伝子が転移し、2) 転移遺伝子からタンパク質合成が可能となり、さらに、3) 合成されたタンパク質を共生細菌に運ぶ輸送系が進化した。中でも、3が最も困難と考えられており、「オルガネラ」と「細菌」を区別する指標とされる。農業害虫として知られるアブラムシは、腹部体腔内に「菌細胞(bacteriocyte)」と呼ばれる特殊な細胞を持ち、共生細菌「ブフネラ(Candidatus Buchnera aphidicola, Gammaproteobacteria)」を多数収納している。ブフネラは、アブラムシの餌である植物師管液に乏しい栄養分を合成・提供することで宿主の生存を支えている。一方でブフネラは、2億年にわたる宿主との共進化過程で多くの遺伝子を失っており(ゲノムサイズ:420-650 kb)、菌細胞の外では増殖不能である。我々の先行研究により、アブラムシゲノムは、ブフネラやその他の細菌から複数のDNA断片を獲得していることが明らかとなっていた。今回、我々はそのひとつであるRlpA4遺伝子に注目し、大腸菌の発現系を用いてタンパク質を合成したのち、これに対する抗体を作製し、アブラムシ共生系に対する各種解析を行った。その結果、当該遺伝子から、タンパク質が真に、また菌細胞特異的に合成され、ブフネラ細胞に輸送されていることが明らかとなった。これは、オルガネラの成立過程で起きた進化と同様の進化が、多細胞生物である動物でも起きていることを示す。
keywords:アブラムシ,菌細胞,共生細菌,ブフネラ,遺伝子水平転移