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O34-02 : G+C含量の異なる2種類の16S rRNA遺伝子を使い分ける好塩性古細菌Haloarculaの生態
Posted On 20 10月 2014
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1静大院・理・地球科学, 2, 3, ,
タンパク質合成の翻訳を担うリボソームは大小2つのサブユニットからなる。原核生物の小サブユニットは16S rRNAと21種類のタンパク質で構成される。多くの原核生物はゲノム上に複数コピーの16S rRNA遺伝子を有するが、それらの塩基配列はほぼ一致している。一方、好塩性古細菌Haloarcula属の中にはゲノム上に3種類の16S rRNA遺伝子(rrnA、rrnB、rrnC)を有し、rrnAとrrnBC間で塩基配列は概ね5%異なることが報告されている。さらに、rrnAとrrnBCのG+C含量を比較すると、高G+C含量のrrnA (58-59%)と低G+C含量のrrnBC (56-57%)の間で2%の違いを見ることができる。微生物分子温度計(Kimura et al., Environ. Microbiol. Rep., 5:468-474, 2013)を用いて各16S rRNA遺伝子のG+C含量から至適温度を推定すると10℃の違いがあった。そこで、Haloarcula属菌株を20℃から50℃までさまざまな温度で培養し、rrnAとrrnBCの発現量を測定した。その結果、20-25℃では低いG+C含量のrrnBCの発現量が増加し、45-50℃では高いG+C含量のrrnAの発現量が有意に増加した。多くのHaloarcula属菌株は、砂漠の塩湖といった昼夜の温度変化の激しい環境から単離されてきた。よって、Haloarcula属菌株は低温時には低いG+C含量のrrnBCを、高温時には高いG+C含量のrrnAを優先的に発現させるという、温度変化への適応手段を獲得した可能性が示唆された。
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