O33-04 : 大規模比較ゲノム解析が明らかにする、プロテオロドプシンを持つ海洋細菌のゲノム進化
Posted On 20 10月 2014
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1東大・大気海洋研, 2東大・大気海洋研, 3東大・院・新領域, 東大・院・総合文化, 宮崎大・フロンティア科学実験総合セ
プロテオロドプシン(PR)は2000年に発見された膜タンパク質であり、光エネルギーを利用して細胞内外にプロトン濃度勾配を作る機能を持つ。PRを持つ細菌は従属栄養的に増殖しながら、光エネルギーを利用して作ったプロトン濃度勾配をATP生成、能動輸送、鞭毛運動など様々な用途で用いると考えられている。海洋表層で優占する多くの細菌がPRを持つため、海洋表層細菌の生態を理解するためにはPRを持つ細菌の生理・生態学的特徴の解明が必須である。
2013年にBeatrizらは、バクテロイデス門においてPRを持つ株はPRを持たない株に比べゲノムサイズが小さいことを報告した。このことは、PRの有無が異なる株の違いに、ゲノム情報から迫ることができることを示唆している。PRを持つ細菌の生理・生態学的特徴を理解するためには、PRの有無がゲノムの様々な特徴とどのように関連しているのか、詳細な解析を行うことが必要となる。
このような背景のもと、本研究では海洋性アルファプロテオバクテリア、ガンマプロテオバクテリア、及びバクテロイデス門細菌のゲノム情報を用いてPR遺伝子の有無に着目した大規模比較ゲノム解析を行った。その結果、PR有無が異なる株は活性酸素の除去に際し異なる種類のカタラーゼを利用していることが示唆され、PRとの強い関わりが予想される機能未知遺伝子を発見することが出来た。この遺伝子はロドプシンを持つ細菌と光合成を行う細菌の両者で高度に保存されており、光エネルギー利用において重要な働きをする遺伝子であること、PRを持つ細菌の生理・生態学的特徴を明らかにするための新たな鍵となることが期待される。
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