O33-03 : 完全ゲノム配列比較に基づいた人為起源有機塩素系殺虫剤γ-HCH分解細菌の出現と進化の考察
Posted On 20 10月 2014
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1東北大・院・生命科学, 2, 3, ,
有機塩素系殺虫剤γ-hexachlorocyclohexane (γ-HCH)は完全な人工化合物であり、γ-HCH分解細菌は細菌の機能進化の研究対象として優れている。我々はγ-HCH分解細菌Sphingobium japonicum UT26株のγ-HCH分解代謝経路の全貌を解明し、全ゲノム配列決定を含む詳細な解析を実施してきた。本研究では、他のγ-HCH分解細菌Sphingomonas sp. MM-1株、Sphingobium sp. MI1205株、Sphingobium sp. TKS株の全ゲノム配列を完全決定し、比較解析を行った。これら4株は地理的に離れた場所で単離され、系統的にも互いにある程度離れているにもかかわらず、ほぼ同一のγ-HCH代謝関与遺伝子群 (lin genes) を保持しており、それぞれの先祖株が独立に水平伝播でlin genesを獲得してγ-HCH分解細菌が誕生したと考えられた。実際、UT26株以外の3株では、ほぼ全てのlin genesがプラスミド上に存在していた。しかし、lin genesは複数のレプリコン上に散在し、lin genes周辺領域も多様であった。一方、lin genesの近傍には高頻度で挿入配列IS6100が存在する。IS6100の転移に伴う標的配列の重複の痕跡から、IS6100の転移により、(i) レプリコンの融合と解離を伴う大規模なゲノム再編成、(ii) lin genes周辺領域の多様化、が引き起こされ、少なくとも結果的にIS6100がlin genesのゲノム上の分布と相対的位置関係を’edit’していると示唆された。
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