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P26-1 : 変異株集団を用いた細胞外マトリクス生産機構の探索
Posted On 20 10月 2014
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1静大・工・物質工, 2静大院・工, 3, ,
多くの微生物は自然界において浮遊状態ではなく、固体表面に付着し増殖することによって形成した構造体「バイオフィルム」として存在する。バイオフィルム形成は有用物質生産や廃水処理への利用など有益な面と、食品腐敗や生活用品の汚染・腐食、人体組織表面における疾病などの負の面を併せ持っており、その制御のためには形成機構の理解が必要不可欠である。バイオフィルム形成には多糖やタンパクなどの細胞外マトリクス生産が関与しているが、その遺伝子発現制御機構は非常に複雑であり、バイオフィルム研究のモデル微生物であっても未解明な部分が多い。水圏に存在する微生物の主要な細胞外マトリクス構成成分はアミロイドタンパクである既往の報告から、本研究では当タンパクを生産する大腸菌を用いてその新規制御因子の探索を行う事を目的とした。
大腸菌の各遺伝子欠損株集団及び過剰発現株集団から、Congo-redで呈色される細胞外マトリクスの合成に関与する因子の探索を30°C及び37°C条件下で行った。30°Cにおいては既知のアミロイドタンパク合成に関与する遺伝子欠損株でCongo-redによる呈色が見られなかった。また、既往の報告にない因子の細胞外マトリクス合成への関与が示唆された。37°Cでは30°Cの時とは異なる遺伝子が細胞外マトリクスの合成に関与していた。
以上の結果から、温度条件により異なる細胞外マトリクス生産の遺伝子制御プロファイルが示唆され、各条件においてマトリクス生産に関与する新規因子が発見された。今後分子生物学的及び物理化学的解析により各条件におけるバイオフィルム形成機構の詳細を明らかにする予定である。
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